諭吉と銀狼(4) ページ26
違う。
あれはレイヤではない。
違う、違う、違う!
否定する頭とは裏腹に、体に何かが込み上げる。
「っ……!」
それが吐き気と分かり、諭吉は咄嗟に手で口元を押さえた。
その時だ。
ふわり、と。
優しい風が吹いた。
諭吉の髪が揺れるのと同じに。
『レイヤ』の黒髪がなびく。
見えない糸が切れるように。
『レイヤ』の首が傾いて。
その動きに、『レイヤ』のまぶたが震え。
すう……、と。
開かれた瞳が、諭吉に向けられた。
「!!!」
……生きている。
幻でもない。
間違いなく、本物の……、諭吉の愛するレイヤ。
「レイヤ!」
一気に感情が噴き出して。
「レイヤ!」と叫ぶと同時に、諭吉の足は素早くレイヤへと駆け。
首の傾きにつられて、グラッと全身をよろめかせるレイヤが。
地に膝をつくより先に。
諭吉の両腕は、しっかりとレイヤを抱きとめていた。
「レイヤ!!」
もはや、なぜレイヤがここにいるのかという、些細な疑問を口にする余裕はなく。
「レイヤ! ……ああ、レイヤっ!!」
ただ、名を呼んで。
永遠の眠りに旅立ってしまったように見えたレイヤが。
その目で諭吉を見つめ、ここにいる事。
ここで息をしている事を、確かめて。
「……レイヤっっっ!!!」
例えようのない喜びに、打ち震えた。
だが。
目覚めたレイヤは、諭吉をぼんやりと眺め。
それから、傾げた首のまま、口を動かした。
「……誰?」、と。
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カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» 返信ありがとうございます!だいぶ更新が出来ずにいて、長々とお待たせしてしまって、本当に申し訳ありません。今後もゆっくりになってしまいますが、この作品が好きと言ってくださる名無し40367号様に飛んできていただけるよう頑張ります!よろしくお願いします!! (2023年3月30日 15時) (レス) id: 877faacbee (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - カナコさん» 返信ありがとうございます!本当にこの作品が好きで通知来た瞬間嬉し過ぎて飛んで参りました。本当にありがとうございます。 (2023年3月30日 14時) (レス) @page40 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» コメントありがとうございます!ものすごく久しぶりに読者様からコメントいただき、今ちょっとどうしていいかわからないくらい動揺してます。これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります!コメント本当にありがとうございました!! (2023年1月10日 18時) (レス) id: d8c57c683a (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - いつも神作品をありがとうございます!これからも頑張ってください! (2023年1月10日 18時) (レス) @page24 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナコ | 作成日時:2022年5月18日 12時