銀狼(８) ページ18
振り下ろされる斧を。
日本刀の鞘で受け止めた。
接する角度が、わずかに違えば。
鞘は、内に収めた刀ごと、粉砕されていたかもしれない。
何度も斧の軌道を目にし。
風の音から、斧の力量を推し測り。
そういうことを、無意識のうちにやってのけたからこそ。
抜刀をせず、……もちろん、頭を斧に潰されることもなく。
相手の攻撃を防ぎ切った。
そして、防ぐと同時に。
諭吉の思考は、早くも次の一手を瞬時に選び取る。
斧と日本刀の衝突によって、諭吉とクマの双方に跳ね返る、強い力。
その衝撃によって、クマがひるんだ瞬間を見逃さず。
「はっ！」
日本刀を勢いよく押し上げて。
斧も、クマの巨体も、一緒くたに弾き飛ばした。
ズザザザッッッ……！
背中でスライディングをするように。
地面を転がり滑るクマ。
……残念ながら。
今回は柔らかい膝掛けの上に、優しく横たえてやることはできなかったが。
外傷は、せいぜい肘を擦りむく程度だろう。
そして、恐らくは。
もう立ち上がるまい。
クマを突いた瞬間。
その身体の疲労度合いと、残された体力を感じ取った。
操られている精神の状態は、定かではないが。
諭吉の与えた衝撃に、クマの身体は活動の限界を迎えたはずだ。
「…………」
見つめる先。
斧を手離し、仰向けに倒れているクマは、ピクリとも動かない。
諭吉は、一つ、息を吐き。
鞘を握る左手に力を込めた。
指輪を強く、鞘に押し付けて。
心の中のレイヤへと、声を掛けたかった。
終わったぞ、と。
今、レイヤの元へと戻る、と。
……愛している、と。
しかし。
レイヤへの言葉を……、愛をつぶやくよりも早く。
諭吉に声が掛けられた。
『つまらん……』
それは、ザワザワと木々が騒めく音だろうか。
風の中に聞こえる、幻聴だろうか。
『つまらんのう……』
いや、もっと近くから聞こえる。
『肉を斬り、骨を断ち、御霊を奪う。それがお主の刀ではなかったか？』
クマは動かない。
だが、この声は。
『血の香のせん刀に、一体何の意味がある。……そうは思わんか？』
薪割りをしながら、何度も聞いた、異能の声。
『忘れるでないぞ。お主だけが、過去と決別できると思うなよ……』
それが、今。
足元に転がる、火消し壺から聞こえた。
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カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» 返信ありがとうございます！だいぶ更新が出来ずにいて、長々とお待たせしてしまって、本当に申し訳ありません。今後もゆっくりになってしまいますが、この作品が好きと言ってくださる名無し40367号様に飛んできていただけるよう頑張ります！よろしくお願いします！！ (2023年3月30日 15時) (
レス) id: 877faacbee (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - カナコさん» 返信ありがとうございます！本当にこの作品が好きで通知来た瞬間嬉し過ぎて飛んで参りました。本当にありがとうございます。 (2023年3月30日 14時) (レス) @page40 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
カナコ(プロフ) - 名無し40367号さん» コメントありがとうございます！ものすごく久しぶりに読者様からコメントいただき、今ちょっとどうしていいかわからないくらい動揺してます。これからも楽しんでいただけるよう、更新頑張ります！コメント本当にありがとうございました！！ (2023年1月10日 18時) (レス) id: d8c57c683a (このIDを非表示/違反報告)
名無し40367号(プロフ) - いつも神作品をありがとうございます！これからも頑張ってください！ (2023年1月10日 18時) (レス) @page24 id: 7bff5eda1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カナコ | 作成日時：2022年5月18日 12時
