社長とネコごはん(5) ページ8
店の外に出て。
レイヤは我が目を疑った。
行列ができている。
この古いバラック小屋の店に。
順番待ちの人の列が発生していた。
「うわー、すごい行列ですね」
「ああ。久方振りに訪れたが……、いつの間に、これ程の行列の出来る店に……」
「だって、美味しいですもん。そりゃ、人気出ますよ。みんな並びますよ。私なんて……、美味しすぎて、言葉を話すのを忘れてました」
「うむ、それについては、右に同じ」
「諭吉さん、このお店って、やっぱり昔からの馴染みの店なんですか? お肉焼いてくれた女性、お知り合いとか?」
「いや、違う。ここは、だいぶ昔に、知人に教えられ……」
言いかけて、諭吉が歩みを止めた。
入店待ちの行列の中に、知った顔を見つけたのだ。
同時に、並んでいた相手も、諭吉に気づき。
「おお、誰かと思えば……」と、扇子を持った片手を上げた。
レイヤが初めて目にする、その人物は……。
恰幅のよい体格に、諭吉と同じく、和装を召している。
きっちりと袴も着けており、なかなか堂に入った風格だ。
頭部は、スッキリと地肌で統一されており。
日中ならば、太陽の光をよく反射することだろう。
そんな頭とは対照的に。
顎からは、存在感のある髭が生えている。
まるで、上下が逆さになったような、珍妙な印象がないわけではない。
……が。
その眼鏡の奥の瞳は、どうも、何かを含んだ色合いだった。
今でこそ、和やかに緩んでいるが……。
一筋縄ではいかないような、大きな威力を秘めているような。
場合によっては、周りを瞬時に威圧することも容易い、そんな瞳だ。
その、レイヤの第一印象を裏付けるように。
諭吉が……、武装探偵社の社長が、小さく頭を下げた。
とっさに、レイヤも同じように礼をする。
しかし男は、そんな形式上の挨拶は気にも止めず、
「うちの若いのが徹夜続きでな。たまには栄養のあるもんを食わしてやろうと、連れて来たんだが……、いつの間に、こんなに行列が出来るような店になったか……」
と、苦笑しながら。
自分の後ろを、手持ちの扇子の先で示した。
そこには、もう一人。
スーツ姿の青年が立っていた。
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カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時