検索窓
今日:11 hit、昨日:4 hit、合計:9,146 hit

社長とネコごはん(5) ページ8

店の外に出て。
レイヤは我が目を疑った。

行列ができている。

この古いバラック小屋の店に。
順番待ちの人の列が発生していた。

「うわー、すごい行列ですね」
「ああ。久方振りに訪れたが……、いつの間に、これ程の行列の出来る店に……」

「だって、美味しいですもん。そりゃ、人気出ますよ。みんな並びますよ。私なんて……、美味しすぎて、言葉を話すのを忘れてました」
「うむ、それについては、右に同じ」

「諭吉さん、このお店って、やっぱり昔からの馴染みの店なんですか? お肉焼いてくれた女性、お知り合いとか?」
「いや、違う。ここは、だいぶ昔に、知人に教えられ……」

言いかけて、諭吉が歩みを止めた。

入店待ちの行列の中に、知った顔を見つけたのだ。
同時に、並んでいた相手も、諭吉に気づき。

「おお、誰かと思えば……」と、扇子を持った片手を上げた。

レイヤが初めて目にする、その人物は……。

恰幅のよい体格に、諭吉と同じく、和装を召している。
きっちりと袴も着けており、なかなか堂に入った風格だ。

頭部は、スッキリと地肌で統一されており。
日中ならば、太陽の光をよく反射することだろう。

そんな頭とは対照的に。
顎からは、存在感のある髭が生えている。
まるで、上下が逆さになったような、珍妙な印象がないわけではない。

……が。

その眼鏡の奥の瞳は、どうも、何かを含んだ色合いだった。

今でこそ、和やかに緩んでいるが……。
一筋縄ではいかないような、大きな威力を秘めているような。
場合によっては、周りを瞬時に威圧することも容易い、そんな瞳だ。

その、レイヤの第一印象を裏付けるように。
諭吉が……、武装探偵社の社長が、小さく頭を下げた。

とっさに、レイヤも同じように礼をする。

しかし男は、そんな形式上の挨拶は気にも止めず、

「うちの若いのが徹夜続きでな。たまには栄養のあるもんを食わしてやろうと、連れて来たんだが……、いつの間に、こんなに行列が出来るような店になったか……」

と、苦笑しながら。
自分の後ろを、手持ちの扇子の先で示した。

そこには、もう一人。

スーツ姿の青年が立っていた。

社長とネコごはん(6)→←社長とネコごはん(4)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.7/10 (12 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
6人がお気に入り
設定タグ:文スト , 福沢諭吉 , 短編
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。