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社長とネコごはん(3) ページ6

肉と野菜に、充分にお腹を満たされた頃。
レイヤはようやく、隣を見上げる。

自分と同じく、言葉なく食事をする、恋人を。

思えば……、
福沢諭吉がタクシーの中で語ったことは、間違っていなかった。

今宵の夕食は、肉。焼肉。
食べるものはすべて、店主によって選ばれ。
目の前で、店主が肉を焼き、提供してくれる。
そういうタイプの店。

間違っていない。
けれどレイヤは、この店を見た時に。
まずは、自分の想像した外見とは対照的であることに、驚いてしまった。

結局の所。
レイヤは、諭吉の言葉だけで。
勝手に、「高級焼肉店」というイメージを持っていたのだ。

立派なビルディングに入っている店の、きらびやかな内装に囲まれて。
粛々と肉を焼かれる……。

そんな、いわゆるステレオタイプの、「高級」と呼ばれる店を想像していた。

タクシーの中で溢れさせた唾液は。
食事の内容よりも、店のイメージに刺激された唾液だ。

本当は。
大切なのは。
高級イメージではなく……、

美味しいかどうか。

美味しいものを、素直に美味しいと思えるかどうか、だ。





そういう意味では、諭吉は騙されないのだろう。

見たくれや、雰囲気の高級さに飲まれ。
本当の料理の味を、色眼鏡で見てしまうことはない。

そう、今、レイヤの隣に座っているのは。
なんと言っても、『真贋を見極めることのできる男』なのだから……。





その男が、レイヤの視線に気づいて。
顔をこちらに向ける。

もぐもぐと、口を動かしながら。
「美味いか? 美味いな?」と、目で問いかけるので。

レイヤも、無言で頷いた。

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カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時

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