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社長のネコごはん(1) ページ48

「レイヤ、来い。座れ」

ファミレスでの、賑やかな夕食を終え。
帰宅して、すぐにコーヒーを淹れようと思っていたレイヤは。
諭吉に呼ばれ、キッチンへ向かう足を止めた。

そして。
ソファに座る、諭吉の隣に、腰を下ろす。
と……、

「違う、レイヤ」
「?」
「ここだ」

諭吉が、自分の膝を軽く叩いて。
レイヤの座る場所を指定する。

長い時間、『社長』と『事務員』でいた日の夜は。
どこから、どうやって、『彼氏』と『彼女』に戻ろうか。
二の足を踏んでしまうけれど。

レイヤの彼氏は、こうやって。
ほんの二言、三言で……、
わずかな動作で……、
優しく誘う、深い瞳で……。
一番大切なことを、引き寄せてくれる。

二人は恋人同士なのだと。
こうして愛し合っても良いのだと。
レイヤの身も心も染め上げながら、教えてくれる。

諭吉の膝に、またがるように座り。
向かい合ったなら。

互いの顔は、自然と近づいて。

言葉を紡ぐための唇は、重なって。

二人の柔らかさを。熱を。
ただ、混ぜ込んでいく。

「レイヤ……。なぜ手を離した」

キスを、今度はレイヤの耳に落とし。
諭吉が低い声で、問う。

耳から、全身の力を奪い取られながら。
レイヤは、思い出す。

あれは、まだファミレスに向かう前。

いつの間にか国木田の消え去った社長室で。
では二人で何か食べに行こうか、と。
退室した時。

探偵社の廊下で、珍しく、諭吉が手を握ってきた。

少し驚いたけれど。
もちろん嬉しくて。

思わず口元を緩めながら、社員室の扉を開いて。
……驚いた。

勤務時間をとっくに過ぎた室内に、勤務時間と変わらない面子がそろっており。
その全員が、一斉にこちらを見たのだ。

反射的に。
レイヤは、諭吉とつないでいた手を離していた。

「レイヤ、答えろ。なぜ手を離した……」

答えを求める、諭吉の大きな手が。
レイヤの体をなぞる。

「ん……、だって……。恥ずかしかった、から……」
「私と手を繋ぐのが、恥ずかしい、か?」

「そうじゃ、なくて……。あっ……。みんなが、いたから……」
「私と手を繋いでいる姿を皆に見られるのが、恥ずかしい、と?」

「そ、そんな意味じゃな……、あっ、あぁっ!」

レイヤの首筋に。
諭吉の、牙を立てるようなキスが与えられた。

社長のネコごはん(2)→←国木田のファミレス(27)



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カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時

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