国木田のファミレス(11) ページ31
腹の虫を鳴らしたのは、自分だと。
上目遣いで、照れながら白状する、敦に。
隣の鏡花が、
「……私も、空腹。いつ鳴っても、おかしくない」と。
なぜか力強く、言い切った。
すると。
段ボールを運び終え、両腕をグーンと伸ばした賢治も、無邪気に同意する。
「そうですねえ。僕も、羊羹と瓶ラムネのギッシリ詰まった段ボールを運んで、お腹すきました! 早くご飯が食べたいです!」
「そういや、そうだねえ……」と、与謝野も続け、
「今日は、月締めの多忙な一日だったからねえ。昼食も、書類片手に握り飯だ。腹が鳴るのは、人体の必然さ。……乱歩さんも、だいぶ空腹かい?」
「僕? 僕は別に、お腹空いてないよ」
「……その羊羹は、三本目だろう? そろそろ夕飯にしないと、一年分の駄菓子が、一晩で終わっちまうよ?」
「!?」
「せめて一ヶ月は、保たせたいもんだねえ」
言われて気づき。
驚いて、コクコクと頷く名探偵は。
目を見開いて、視線を送った。
その乱歩の視線を追って。
誰もが、同じ人物を見つめた。
そうして。
なんとなく。
誰もが、発言を待った。
その人物は、普段、このような場で率先して発言をするタイプではない。
けれど、一度口を開いたならば。
確固たる信頼と力強さで、社員を導いてくれる。
だから。
今、誰もが。
発言を待っていた。
じっと目を閉じて、この状況を静観している。
武装探偵社の、社長の発言を。
……そして。
そういう事が、分かったのかどうかは、定かではないが。
武装探偵社の社長が……、
つまり、福沢諭吉が。
ゆっくりと、口を開いた。
「……では、皆で夕飯でも食べに行くか」、と。
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時