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国木田のファミレス(9) ページ29

とっくに定時を過ぎた、武装探偵社に。
なぜか再集結する形となった、社員たち。

太宰が、「おやおや」と敦の手元を見つめ。

「敦くん、財布を探偵社に置き忘れたのかい?」
「あ、はい。そうなんです。……この財布がなかったら、今晩の夕飯のおかずが買えなくて、三日連続、お茶漬けになるところでした」

「……君は本当に茶漬けが好きだねえ。何も三日連続で食せずとも……」
「あ、あはは。……実は、今月、食費が足りなくて……。お茶漬けを食べるしかなかったんです」

苦笑する敦に、鏡花が、
「今月は、高い豆府を買いすぎた」と、補足した。

しかし敦は、すぐに嬉しそうに笑顔を戻し、

「でも、今日の夕飯は、この財布に入っている最後の三百円で、お肉を買おうかと思ってるんですよ! ね、鏡花ちゃん」
「そう。グラム十四円の、合挽き肉」

その、破格の安さに。
聞いていた谷崎は、「本当に人が食べても大丈夫な肉?」と思い。

事実、太宰が悲鳴をあげた。

「安い! あまりに安すぎる! それは本当に肉かい? 人が口にしても良い、食肉かい?」
「さあ、どうなんでしょう? ただ、僕はきっと、虎の餌くらいの肉を食べても、お腹を壊さないと思うんで……」

「ああ、少年! 空腹に耐える後輩を、見て見ぬ振りなど出来たものか! 安心し給え! ちょうどここに、夕食を共にする相手を探している先輩がいる! 一緒に何か食べに行って、腹一杯になるまで、ご馳走になるが良い! ね、国木田くん!」

「太宰! 貴様、毎度毎度、俺の財布を当てにするな! 俺だってなあ、今日は給料日前で、決して余裕があるとは……」

その国木田の大声を遮るように。

ドアが開いた。

社長室へと続く、廊下のドアだ。

とすれば、もちろん。

入って来たのは。
社長室から出てきた、一組の男女。

社内公認カップルでもある。
社長と事務員。

室内にいた者たちが、一斉に視線を向けるのと同時に。

社長と事務員の、仲睦まじく、つながれていた手と手は。
まるで稲妻のような早さで、一瞬にして、離れたのだった。

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カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時

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