蕎麦(6) ページ17
欠点を指摘されたはずの国木田が。
先生に褒めれた子どものように、顔を紅潮させ、
「社長! 実は同じ事を考えておりました! もう少し筋肉をつけよう、と! そしてそのために、どうすれば良いかを思案し……、昨日まで、五日連続で、夕食に焼肉を食べたところだったのです!」
「何!?」
まさか、そんな返答が来るとは思わずに。
諭吉は唖然とする。
「社長の様な、強靭な肉体に近づくため、と……、五日連続で焼肉を食べました。だので、今日は少しアッサリと、蕎麦にしようかと思ったのです。……が! 社長がそうおっしゃるのなら! 肉を食べます! 十日でも二十日でも、焼肉を食べ続けてみせます!!」
うっ……。
諭吉は思わず、顔をしかめる。
五日連続の焼肉を想像したならば。
それだけで、胸焼けがしてきた。
そして、その反動で。
口が、蕎麦を求めている。
今、強烈に蕎麦が食べたくなってしまった。
かと言って……、
国木田の提案する駅前の蕎麦処に、レイヤを連れて行くことなどできない。
そしてまた、あの美味い蕎麦を出す旅館に……、
諭吉とレイヤだけの秘密の花園とも言える、あの場所に……、
仕事の延長の様な形で、三人そろって、のこのこと訪れる気にもなれなかった。
「あ、あの……、社長」
苦悩の諭吉に。
レイヤの声がかけられた。
「えっと……、国木田さんが、おソバ食べたいって言ってるし……、やっぱり、あそこに行きませんか?」
「!?」
「だって、おソバといえば、あそこしか……。何でも食べる私だけど……、もう、おソバは一生、あのお店で食べたいって、思ってるんです」
「レイヤ……」
「だから、今夜三人で、あのお店に……」
「駄目だ!」
何事かを考えるより先に。
諭吉の口は、レイヤの提案を切り捨てていた。
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カナコ(プロフ) - ライさん» ありがとうございます!!!!こんなコメントいただけて、嬉しくて涙出ました。愛読してくれる方に楽しんでもらえるよう、マイペースながらも頑張りたいと思います! (2019年6月6日 21時) (レス) id: 596e7dae07 (このIDを非表示/違反報告)
ライ - 好き!!!!!もう、本当、そーゆーところ大好きです!愛読し続けます (2019年6月5日 13時) (レス) id: c9f19c4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:カナコ | 作成日時:2019年6月5日 11時