【題名のない物語】in x ar (ページ29)

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「はぁ…はぁ…」

おでことおでこがくっついてる至近距離で見つめ合いながら息を整えようとするけど、いのちゃんのキラキラしてるきれいな瞳に見られるとどうしてもドキドキが治まらなくて、しんどい…

「つらい…」

「えっ気分悪い？！」

「大ちゃんがかわいすぎて、心臓、持たない」

「…んだよバカじゃねえの？！驚かさないでよマジで！」
照れすぎてつい口が悪くなった俺を満面の笑顔でまた抱きしめてくれて、ごめんって耳元に囁いて。

…反則だって。そのとびっきりの笑顔も、ムダに色っぽいイケボも…余計恥ずかしくなるじゃん…

「癒やしてくれてありがとう、大ちゃん。」
耳たぶにキスして、ニコニコしてるいのちゃんは『さあ、そろそろ仕事の準備でもしよっか』と呟きながら、俺を膝から下ろしてリビングへカバンを取りに行った。

「これから広島？」

「うん。確かに自転車の企画？今日やるって聞いたけど…」必要なものをカバンに入れながら、いのちゃんがため息をついた。「自転車はさすがにちょっとキツイな…絶対また物食わされるし…」

「頼むから無理すんなよ？しんどかったらちゃんと言えよ？…あっ、ちゃん、薬忘れてる！」

薬を渡すとまたため息が聞こえた。

「もう…薬マジ嫌なんだよ…速く治らないかな…」ブツブツ言いながらもきちんと薬袋をカパンに入れた。「ひとり飯も苦手だしな…」

「そんなの、俺が一緒に食べればいいでしょ？」

「それはヤダ。」

きっぱりと断られた。なんかムカつく。

「何でだよ、髙木とは行ってるじゃん！」

「あ～あれはほら、あいつ食がOLじゃん？だから意外といろんなヘルシなお店知っててさ」

「そんなの、俺だって！」

俺だっていのちゃんのためならいくらでも調べるし、連れてってあげるし！