【題名のない物語】in x ar (ページ17)

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しばらく黙り込んでると、いのちゃんが約束通りにすらすらと事情を説明してくれた。

最初はもやもやする違和感だけだった。
ドラマ撮影の時ろくに食事取ってなかったせいかな、少し休んだら治るかなと自己解釈してるうちに、ちょうどライブも始まってスケジュール鬼だったから病院行く暇がなかった。しばらくほっといたら今度はキリキリし始めて、そっから痛さがだんだん激しくなって、さすがにやばいと思ってマネージャーに報告したら強制的に病院に連れられて検査受けた結果、胃炎と潰瘍だって。

ウイルスは検出してなかったから、食生活が不規則なのと、ストレスが原因ではないかと言われた。

「テキトーキャラなのにストレス溜まったんだって－矛盾してない？」
いのちゃんが自嘲のように笑ってた。

本当はテキトーなんかじゃないのに何笑ってんだよ。

とにかく胃を休ませることが大事。
いちばん効率的なのは完全禁食して、点滴で必要な栄養素だけ取るっていうやり方だけど、それはしばらく入院することになるんでとてもできなかったから、薬だけもらって、かなり厳しい食事制限をしながら様子を見ることにした。

メンバーで知ってるのは光と髙木だけ。

光には再診に行く時間帯がどうしてもラジオの入り時間とかぶるから自己申告したけど、髙木にはライブ前に別室で一人レトルトのおかゆを食べてるところたまたま見られちゃって、どうしたのそんなの食べて、って聞かれたから一応説明した。そして、事情がわかる二人にちょこちょこお腹に優しい食事のできるお店に連れてってもらった、とのこと。

ちなみに光には『食べすぎて病気になったんじゃないの？体調管理ぐらいしっかりしなさい』って、説教されたらしい。

だから最近あまりケータリングも手に付かないしライブ後の打ち上げも断り続けるわけか、話を聞いたら納得。

「こんなことあって初めて気づいたんだけど、俺って食べる仕事本当に多いな－って」
仕事以外の食事はじゅうぶん気をつけてるけど、現場で食わされる物は選べないからね－何回も振り出しに戻ってお医者さんにも怒られたな－って。
食べれるもの限られてるから体重落ちたのに、仕事中お腹鳴らないようにたくさん水飲んでるから顔だけパンパンでめっちゃブスだよね－って。