◎帰る場所 ページ27
□□□
「はあ…ただいま」
倒れたその夜、大事を取って一晩過ごした病院はどことなく寂しい雰囲気だった。
きっとそれまでメンバーがいたこととか、オレンジの灯りを消したこととか、いろんな終わりがあそこにはあるから。
静まり返った空気がちょっとだけこわくて、布団を頭までかぶって寝た。
大切で大好きな私の亮平くんは、メンバーで最後に病室を出た。
本当は一緒にいると言って聞かなかったけど、翌日も仕事があったこともあって強制的に帰宅。
おやすみを告げた後、ちゅっと音をたてて触れた唇と穏やかな彼の笑顔に、心臓がぎゅうってなったのは秘密だ。
翌日は仕事を調整してもらった。
昼過ぎに病院から我が家へ戻ったものの、一人で過ごすなら寂しい病室と変わらないな、なんて考えてしまう。
コーヒーを飲みながら録り溜めたテレビ番組を消化した。
画面の中で笑う夫がやっぱり可愛くて、
「早く帰ってこないかな…」
ひとり言が口をついて出たことに自分でびっくり。
気がつけば窓の外は暗くなっていて、慌てて室内灯をつけた。
見たい番組もなくてテレビを消した。
そうしたら部屋はしん、と静まって、途端寂しさがぶり返す。
昨日の今日で、やっぱり完全回復とはいかないんだろうか。
元々一人の時間は好きじゃない。
涙が頬を伝った。
馬鹿みたいだけど、今私はとっても寂しくて、メンタルが弱り切っている。
今日くらいいいか。でも、弱い自分は嫌い。
でも、
「A」
大好きな、大切なあなたがこんな私を愛してくれるなら、私も頑張って自分を愛そうと思えるんだよ。
「…亮平くん、」
「え、何で泣いてるの!?どうした?何か辛いことあった?」
「…ちがう。さみしくて」
「え?」
「病院から帰ってきて、一人で家にいるのが寂しかったの」
振り向いた私を見た瞬間、唖然とした顔。
そして荷物も放って数歩分の距離を駆け足で近寄って来た。
「…ごめん。やっぱり今日は俺も休みにしてもらうべきだった」
「それはだめ。いただいたお仕事はちゃんとして」
「う…こんな時でもさすがだね…」
鼻を鳴らしながら説教をする私に苦笑いの彼。
私の仕事に対する気持ちはきっとこれからも変わらないし変える気もない。
私にだって譲れないものはあるのだ。
でも、
「…今日は一緒にご飯食べて、お風呂に入って、一緒に眠ろうか」
「…うん」
この人が傍にいてくれるなら、
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藤奈(プロフ) - ポムプリンさん» コメントありがとうございます。少し更新が滞っておりすみません。年末年始でたくさん更新できたらと考えてますので…!今後も楽しんでいただけると嬉しいです! (2021年12月28日 16時) (レス) id: a77d152f7f (このIDを非表示/違反報告)
ポムプリン(プロフ) - これからも更新楽しみにしています! (2021年12月27日 20時) (レス) @page20 id: 5cce6819d2 (このIDを非表示/違反報告)
美紀(プロフ) - 作者さん更新大変なのにいつもありがとうです最近寒くなってきてるので風邪とコロナウイルスに気をつけてくださいね (2021年12月9日 17時) (レス) @page13 id: e19dcb272d (このIDを非表示/違反報告)
藤奈(プロフ) - 美紀さん» いつもコメントありがとうございます。ここから寒い日が続きますが、美紀さんもどうぞお身体に気をつけて。 (2021年12月1日 9時) (レス) id: a77d152f7f (このIDを非表示/違反報告)
美紀(プロフ) - 移行おめでとですコロナに気をつけてくださいね (2021年11月28日 11時) (レス) id: 3abf21e40c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤奈 | 作成日時:2021年11月27日 17時