天使の鉄仮面 (ページ7)

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休日と僥倖ページ7

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春は私生活もお仕事も、推し事も忙しい。

プライベートの時は身バレとかは特に気にしない。

マスクして、せいぜいキャップをかぶるくらいだ。

仕事の時は言わずもがな。しいて言えば余所行きの仮面をつけたりはする。

だが今日は違う。今日は推し事の日だ。

何が何でも身バレしてはならない。

何故ならバレない事こそが、私が推し事を続ける上での事務所との唯一のルールだからだ。

(ちなみにもしバレて騒がれたりしたら、今後一生馬車馬のように働かされるらしい。こわすぎてふるえる)

マスクにキャップ、髪はあえてのふたつくくり。

牛乳瓶の底メガネ(伊達)に服はジーンズTシャツコーディガン。色はなるべく目立たないことを考えてカーキを選んだ。

別に悪いことをしてる訳じゃないけど、自然と背中が丸くなる。

今の私、どう見ても陰キャ。予定通りだ。

電車で訪れた新橋の地は、それこそ仕事でよく来る場所。

駅を出て一番。今日は空気がとても美味しく感じた。

結論から言う。泣いた。

ホロリとか言うレベルじゃない。号泣。

阿部くんかっこよすぎた。やば…思い出しただけで泣ける。まじ秒。

基本的に私は自担しか追いかけられないヲタクなので、正直言って阿部くん以外の記憶がないのだが、とにかくよかった。

いやほんと、タッキーすごいな。

次もし阿部くんに会えたら…その時はこの溢れんばかりの気持ちを伝えてもいいだろうか。

まず歌舞伎の感想全部伝えたい。でもきっと喋れない。

どうしようかな。文にしたためようかな。

ハッ！もしかしてファンレターを手渡せるのか今の私は！？

それ、それやばい。ものすごくやばい。

あーでも鬱陶しくないだろうか。不安要素は割とある。

と、頭ではなんやかんや考えつつ、体はすでにレターセットを漁っている。

書き始めてみれば、どうせ渡せなくても事務所に送ればいいやと思い至った。

確か阿部くんはフローラルな香りが好きと言っていたはずだから、少しだけ便箋に香りづけもしよう。

封をする為にシーリングワックスを用意して、一緒にとじるドライフラワーも準備。

たぶんこの手紙だけを見たらインスタ映え必至だと思うが、これこそヲタクのなせる業。

未だかつて推し以外にこんな心の込めた手紙書いたことない。

『明朝10時。マンション前』

クソからのLINEに了解のみ返事。

続くメッセージに気を失いかけた。

『ゲストにSnowManも来るらしい』

／明日が私の寿命