天使の鉄仮面 (ページ2)

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霧島A、25歳。

今年芸歴10周年を迎えた、世間で言うところの若手女優である。

最近は少しずつテレビでの仕事が増え、世の中にも認知されるようになってきた。

そして皆さんお気づきかと思うが、そんな私の素顔は生粋のジャニヲタである。

Snow Manに落ちて早うん年。

彼らの沼は想像以上に深かった。マジで底がない。

中でも私の推しは阿部亮平くん。阿部担である。

彼の聡明なところも、おっちょこちょいなところも、あざといところも、たまにお口が悪いところも、全部が愛しい。大好きだ。

あとやっぱり顔がいい。

そして今、その推しを目の前にして、私は存分にパニクっていた。

阿部「え、と…ありがとう、ございます？」

初対面で『すきです』はないだろ私！！

何言ってんの！？阿部くん困ってるじゃん！

困り顔でありがとうって、その顔も可愛いなおい！！

「…おい。だから何か言えって」

さっきから横でうるさいこの男は所謂私のマネージャーだ。

名を斉木辰哉。

あ、見たことある名前だと思った？

そうなんだよ名前だけはリアコなんだよこのくそ男。

「あー…阿部さんはじめまして。私霧島のマネージャーをしております斉木と申します」

阿部「えっ、あ、すみませんご丁寧に」

「ご挨拶に伺っておいて意味分からないことばかりすみません。霧島は少し引っ込み思案なところがありまして」

阿部「そう…なんですね」

「驚かせてしまって申し訳ありません」

阿部「いえ！こちらこそ、テレビでお見かけする姿とは少し違ってたので…わざわざご挨拶ありがとうございます」

私を置いて世界が回っている。

おいマネージャーよ、なぜ阿部くんと普通に喋ってるんだ？

私も混ぜてよ。あ、やっぱいいどうせ喋れないから。

「それでは私たちはこれで」

阿部「はい。またあとで」

「……」

「…霧島」

「っ、阿部さん！」

阿部「、はい」

「…本日はよろしくお願いいたします」

阿部「…よろしく、お願いします」

挨拶できた！！全国のヲタクたち！私やったよ！

「では、また後で！」

阿部「はい、また」

「…霧島～楽屋そっちじゃない」

「ちょっと散歩してきます！」

「あほか時間ねえっつってんだろ」

「分かったよ帰るよ！離して！」

斉木さんの手を払って自分の楽屋へ早足で進む。

今の私の満足感たるや。

この感動を今すぐ誰かに伝えたい！！

阿部「(…嵐のようだったな)」

／推しとお話できた！