# Fischer's **短編集 2

）**　peketan ページ34

『おめでとう』


僕はそれしか言えない。


「ありがとう」


君は満面の笑みでそう言うんだ。

僕の気持ちを踏みにじるつもり？

そんな気持ちも君には届かない。

純白のドレスに包まれた君は最高に綺麗だった。

そんな君の隣に立っている人も君にお似合いだった。


＿＿＿＿モトキ、なんでお前がAの隣に。


見たくなかったんだ、正直。

ここにも来たくなかった。

目の前で君とモトキが指輪を付け合って、


＿＿＿＿＿キスをするところなんて。


皆、拍手をしているけど、したくなかった。

ずっと好きだった人の結婚式なんて。


「ぺけ…！」


俺の肩をトンっと叩いて俺の名前を言うA。

もうこんな瞬間もなくなるのかな。


『A、おめでとう』

「うん！ありがと！」


ほら、また僕の好きな笑顔で笑う。

その笑顔を見る度、辛くなるんだ。

A、いい加減 気付いて。

本当は僕は『おめでとう』なんか言いたくない。

『好きだよ』って言いたいのに。

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