【YOI】私ばかり (ページ3)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:1,399 hit

＊ページ3

．

「今日からここがあなたの家よ」

彼女はあたたかく私を迎えてくれた。

こんな私のために迷惑をかけてしまって、申し訳ないと思った。
豪華なお屋敷だなんて、居心地が悪そうだけれど。

「…そして、今日から私があなたの家族」

「……」

「………辛かったでしょう…っ」

彼女は涙目になりながら、私を優しく抱きしめた。
人のために泣く人なんだから、きっと優しい人なんだろう。

こんなときどうすればいいのかわからない。
私は、彼女の背中に手を合わせた。

…香水くさい。

．

「私のことはリリアと呼んでちょうだい」

「…はい」

「遠慮はいらないわ。なにかあればすぐに言っていいから」

私の部屋は二階。
白と薄ピンクで基調した部屋で、おまけに広いバルコニーがついていた。

バルコニーからは遠くだけど海も見える。
ホテルみたいなこの部屋で、毎日眠れるだろうか。

「…あの、」

「どうかした？」

「ピアノって、ありますか？」

私がそう言うと、リリアは驚いた顔をした。

「…ああ、あなたの部屋の隣に。自由に使っていいわ」

「ありがとうございます」

「……懐かしいわ、あなたの母親もよく…」

「私は部屋に戻ります…」

リリアの言葉を遮るように、バタン、と扉を閉めた。