僕の名前をキミは知らない。 (ページ10)

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テヒョンに手を繋がれながら、暗い道を帰る。

怒ってるのかな、歩くの、早い

「テヒョン、私、大丈夫だよ」

そう言って、私は手を解こうとするけど、逆に強く握られてしまった

「俺、あれほど言ったよね」

テヒョンは立ち止まった。

「あいつには近づくなって、何度行ったら分かんの！」

前にも言ったこと、あるんだ

「ごめん」

「お前、あいつから色々されたくせに」

「色々って、」

「さんざんつきまとわれて、襲われかけただろ！」

「そう、だったの…」

ハッと、してテヒョンは口を噤んだ

「ごめん、思い出したくないことだったのに、言って。でも、今回だって、Aが階段から落ちたのはあのストーカーから追いかけられたからなのに」

「それは事実？どうして、そんなことテヒョンが知ってるの？私が追いかけられてた時、テヒョンもそこにいたの？」

また、テヒョンは口を噤んだ。

「俺のこと信じられない？どうして信じてくんないの。俺のこと疑ってんの？」

初めて、テヒョンをこんなに怒らせたかもしれない

「ごめん」

疑ってるわけじゃない

私だって信じたいよ、今一番近くにいる人のこと

「あーごめん、こんな怒るつもりなかった。ただ、俺、Aが心配で。もう二度とあいつに近づかないなら、いいんだ」

怯えてる、テヒョン

そんなに私のこと心配してくれているんだ

「代わりにってわけじゃないけど、ケーキ食べに行こっか。A好きだろ」

「うん」

この前、テヒョンがくれたモンブランを思い出した。消費期限切れて、食べられなかったから

「はい、Aが好きなチーズケーキ」

「え？」

テヒョンが持ってきてくれたのは、チーズケーキだった

でも、私が好きなのはモンブランなんじゃ……？

よく分からないけど、とりあえずそのチーズケーキも美味しそうだった

「美味しい、ありがとう」