青のまなざし【御影玲王】 (ページ1)

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白宝には、高嶺の花とか呼ばれる女がいる。

高校に入学してから、俺は少し不思議な力を手に入れた。

気だるそうに俺の目の前に座るこの女、例の高嶺の花、立花Aの心が読めるようになった。

俺が心を読めるのはこいつだけで、ほかの人間の心はどれだけ念じてみても読めたことは1度もなかった。読みたいとも思わないが。

考えていることは手に取るように分かるし、たまにだけど見ている夢の内容でさえも分かる時がある。目を合わせればするすると自分の頭に入り込んでくるこの女の思考。

さて、話は変わるが俺はこの立花Aのことが好きだ。

考えていることと己の口に出すことが同じ。
全くもって裏表がない。
いつだってこの世の平和を望んでいる、かと思えばふいに何もかもめんどくさい、なんて凪誠士郎のような事を考えることもある。

そしてこの女も俺のことが好きだ。
今だってぐでっと机に顎をくっつけているものの、目の前の俺に対しての思考を止めない。

｢(れお、カッコイイな〜。何考えてるのかな？あ、そういえばキャラメル持ってきてたんだった、食べようかな。れお食べるかな、あー瞬きしてる、かわいい…こっちみた)れお、キャラメル食べる？｣

｢いいのか？貰う。｣

と、こんな調子でこの女は俺に夢中なのである。
それもこれも、この女の思考を読んで1から10までめんどくさがりなこいつのためにお世話をして、共感をして、愛を与えたから。

人間、自分に良くしてくれる相手には気を緩めるものだ。

…この言い草だと俺がAを操っているかのように聞こえる。俺は本気でAが好きだ。だから愛を注ぐのだ。

この世の全てを愛しているところも、気だるそうにしていながらもしっかりした考えを持っているところも、裏表がない性格も、眠たげに細められるその青い瞳も、風に揺れる細いオレンジレッドの髪も、鼻をくすぐる優しい香りも、なにもかもが。

貰ったキャラメルを口に放り込めば、いつも彼女からほんのり香る優しいあの香りの味がした。この女はキャラメルが大好きで、その思考の4割程度はキャラメルに侵されている。博愛主義というよりもキャラメル主義だろう、と何度思ったことか。

甘ったるくて、どろどろに溶かした愛みたいな匂いが、俺はこの女の象徴だと思った。

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