日常81 意見 ページ49
「少し哲学チックな話になるけど、」
「うん。」
「人間を構築しているのは、経験や思い出なんじゃないかなって思うんだよね。」
少女は乱数の目を見て言う。
「だからもし私が誰かのクローンだとしても、その誰かと全く同じ経験をしてなければ私は＜オリジナル＞なの。」
「＜オリジナル＞…。」
「たとえクローンだとしても生まれてきたからには大切な命だから。＜オリジナルな人間＞かなって。」
乱数は少女の意見を聞いて驚く。
実は乱数は中王区が作った＜クローン＞である。
乱数の代わりはいくらでもいて、自分はどうあがいても＜オリジナル＞にはなれないと諦めていた。
それでも、少しでも他の乱数とは違うところが欲しくて、デザイナーになった。
＜オリジナル＞を作る仕事につきたかった。
でも、この少女は＜クローン＞を＜オリジナルな人間＞と言った。
何故かこの少女はいつも見透かしたように自分の欲しい言葉をくれる。
欲しくて欲しくてたまらない言葉をくれる。
自分の命は消耗品では無いのだと言ってくれたのは少女だけだ。
悔しいほどに嬉しかった。
「なぁ、お前にとって俺は＜オリジナル＞か？」
「わ、でた。ブラック乱数。」
「…答えろよ。」
「＜オリジナル＞の権化みたいな乱数が何言ってるの。」
少女にとって乱数はただの人間で、彼の悩みなどは知るはずもない。
個性有り余る乱数がまさか＜オリジナル＞かどうか聞くなんておかしかった。
少女は笑いながら当然だと言う。
乱数はそれが嬉しかった。
「あーあ。ほんと、Aはムカつく。」
「うわ。」
乱数はたまらず少女に抱き着いた。
この少女に心を許さないよう、耐えてきたが、ここまで来たらもう無理だ。
どんな自分も受け入れてくれ、自分の欲しい言葉をくれる。
あぁ、好きだ。この少女が好きだ。
もしこの少女に危険が及ぶのなら、友として自分が助けてあげよう。
「…もう、俺の負けだな。」
「え、何が？」
「こっちの話！」
乱数はすっかり少女に絆されて、少女にくっつく。
少女は急激に縮まった距離感に少々戸惑うが、乱数の可愛さにどうでもよくなる。
中々懐かない猫にやっと懐いてもらえた気分だ。
「まぁいいや。マカロン食べよ。」
「そうだね〜。」
二人は過剰にくっついたままお茶会を再開する。
＿＿ありがとう。
いつかこの言葉を彼女に言えるように。
美味しそうに微笑みながらマカロンをほおばる少女がおかしくて。
乱数もつられて笑顔になった。
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芋けんぴ(プロフ) - 讃良さん» ありがとうございます。私の妄想でニヤニヤしてくださるとは、嬉しいです！気持ち悪いだなんて滅相もない。嬉しい限りです。 (2020年8月2日 12時) (
レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
讃良 - こんにちは！すごく面白くて、終始ニヤニヤしながら読ませていただきました(どうか気持ち悪いとか思わないで！)。これからも全力で応援しております。頑張ってください。体調にだけ気をつけて！ (2020年8月2日 10時) (レス) id: 0970343196 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 神坂 チトセさん» ありがとうございます。私も、コメントの嬉しさにニヤニヤが止まりません。嬉しい限りです。 (2020年8月1日 23時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
神坂 チトセ - こんにちは、めっちゃ面白いです。ニヤニヤが止まりません（笑）無理の無い範囲でこれからも頑張って下さい(^ ^) (2020年8月1日 20時) (レス) id: 46099f0789 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - マチさん» ありがとうございます。嬉しい限りです。 (2020年7月21日 17時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芋けんぴ | 作成日時：2020年7月14日 22時
