日常53 お待たせいたしました ページ19
「やっと着いた!」
少女はようやくイケブクロの控室の前にたどり着く。
長い道のりであった。
「お待たせいたしました!」
「A!」「Aさん!」「おっせぇよ!」
右の方から、一郎・三郎・二郎である。
少女が来るのを今か今かと待っていた三人はようやく到着した少女を見て喜ぶ。
「Aさん、遅いですよ!」
「心配したんだぞ!」
三郎と二郎は少女に駆け寄り、二人から少女へ軽い説教が始まる。
「まじ、すんません。」
「いや、試合前にAの顔が見れてよかった。」
「お、そりゃよかった。」
一郎がようやく少女のもとに行き、素直な言葉をぶつける。
少女は三匹の大型犬を買っている気分になり、それぞれの頭をなでる。
「最前列で皆を見てるね。」
「勝ってきますね。」
「絶対勝つよ!」
「よし、全員揃ったし、喝でもいれるか?」
さり気なく、自分を入れて全員だと言ってくれる一郎に思わず笑みがこぼれる。
シブヤの愉快な友達も、ヨコハマのガラ悪い知り合いも、シンジュクの変わったお兄さんも少女はみんな好きだし、大事ではあるが、やはり一番は絶対このバカ愛おしい家族なのだと再確認した。
「三人とも、愛してるよ!」
少女は三人に飛びついた。
これから彼らは戦いの場へ出る。
勝負の場において「絶対」というものはない。
少しの判断ミスが大きなダメージに繋がったりもする。
もしかしたら、彼らは一回戦でヨコハマに敗れてしまうかもしれない。
しかし、彼らは確実に強い。
それだけは少女も知る事実であった。
「三人は、強いよ。」
「ありがとな。」
「だから大丈夫。勝てるよ。」
「もちろんだぜ。」
「自分を信じて戦ってきてね。」
「はい。」
少女なりの喝を入れ、三人の顔を見る。
それぞれの目に決意や覚悟が見られ、これ以上の言葉は不要だと確信した。
少女は最後に一人一人自身の力を分けるように力強く抱きしめた。
バトル開始まで残り10分。
三人は準備に向かう時間だ。
つまり、勝負前に彼らに会えるのは最後だ。
控室から出ていく三人の背中は自分と同世代であるとは思えないほどたくましく、力強いものだった。
「応援してるよ。」
少女は三人の背中に最後に呟き、観客席の関係者用の最前列へ向かう。
会場のすさまじい熱気。
少女は興奮と汗が止まらなかった。
もうすぐで一回戦が始まる。
少女は一度深呼吸をした後リングを見た。
「選手入場です!」
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芋けんぴ(プロフ) - 讃良さん» ありがとうございます。私の妄想でニヤニヤしてくださるとは、嬉しいです!気持ち悪いだなんて滅相もない。嬉しい限りです。 (2020年8月2日 12時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
讃良 - こんにちは!すごく面白くて、終始ニヤニヤしながら読ませていただきました(どうか気持ち悪いとか思わないで!)。これからも全力で応援しております。頑張ってください。体調にだけ気をつけて! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 0970343196 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 神坂 チトセさん» ありがとうございます。私も、コメントの嬉しさにニヤニヤが止まりません。嬉しい限りです。 (2020年8月1日 23時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
神坂 チトセ - こんにちは、めっちゃ面白いです。ニヤニヤが止まりません(笑)無理の無い範囲でこれからも頑張って下さい(^ ^) (2020年8月1日 20時) (レス) id: 46099f0789 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - マチさん» ありがとうございます。嬉しい限りです。 (2020年7月21日 17時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年7月14日 22時