日常43 お迎え ページ6
「ちょっと失礼するよ。」
「はい。」
寂雷は電話主が一郎と知り、少女に一言断りを入れそのまま電話に出た。
「やぁ、一郎君。あぁ、Aさんなら目が覚めているよ。」
「うん。わかった。じゃあ、待っているね。」
寂雷は電話を終え、少女を見る。
「一郎君が依頼を終えて迎えに来るようだ。」
「そうですか。」
少女は一郎に苦労を掛けてしまったことに申し訳なさそうにしている。
「一郎君のためにも、早く治して元気にならないといけませんね。」
「そうですね。すぐ治します。」
少女は自分を心配していた山田三兄弟を思い出し、誰かのために風邪を治さなければならないという使命感に有難さを感じていた。
自分が元気でいるだけで喜んでくれる人がいることは当たり前ではない。
「私は幸せ者ですね。」
「そうだね。でもAさんはちゃんとその幸せを周りに分けられる人だよ。」
「寂雷さんに言われると本当にそんな気がしてしまうから怖い。」
「事実だよ。…おや、一郎君が着いたようだよ。」
「そうですね。」
病院を駆ける足音が聞こえる。
そして、診察室のドアが開き
「A!」
「一郎、病院を走ったらいかん。」
「ふふ。愛だね。」
一郎が少女を迎えに来た。
「すいません、寂雷さん。」
「良いんだよ。Aさんとの時間はとても楽しかったからね。」
「その髪イメチェンすか?」
「ふふ。そんなところかな。」
「似合うでしょ?」
少女と寂雷はお互いに顔を合わせ「ねー!」と言うように笑い合う。
一郎は二人についていけてないが取りあえずベッドに近づき少女を気に掛けた。
「今は歩けそうか?」
「うん!さっきよりだいぶ楽だから。」
「じゃあ、帰るか。」
「うん。寂雷さん、ありがとうござました。」
少女は一郎に支えられながら立ち上がり、寂雷に礼をした。
「大丈夫だよ。お大事にね。」
「はい。すぐに治してみせます!」
「寂雷さん、本当にありがとうございました。」
そういって少女と一郎は診察室から出ていった。
後ろ姿を眺め、寂雷は微笑む。
「本当に彼女は不思議なクランケだった。」
寂雷は少女とまた会えることを願い、彼もまた診察室から出ていった。
「よし、帰るぞ。」
「あい、しゅっぱーつ。」
少女は今度は助手席に座り、一郎の運転で萬屋ヤマダに帰る。
少女は、
_さて帰ったら大丈夫であることを可愛い二人の弟分に伝えて、早く治してから沢山可愛がってやろう。
そう心に誓うのだった。
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芋けんぴ(プロフ) - 讃良さん» ありがとうございます。私の妄想でニヤニヤしてくださるとは、嬉しいです!気持ち悪いだなんて滅相もない。嬉しい限りです。 (2020年8月2日 12時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
讃良 - こんにちは!すごく面白くて、終始ニヤニヤしながら読ませていただきました(どうか気持ち悪いとか思わないで!)。これからも全力で応援しております。頑張ってください。体調にだけ気をつけて! (2020年8月2日 10時) (レス) id: 0970343196 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - 神坂 チトセさん» ありがとうございます。私も、コメントの嬉しさにニヤニヤが止まりません。嬉しい限りです。 (2020年8月1日 23時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
神坂 チトセ - こんにちは、めっちゃ面白いです。ニヤニヤが止まりません(笑)無理の無い範囲でこれからも頑張って下さい(^ ^) (2020年8月1日 20時) (レス) id: 46099f0789 (このIDを非表示/違反報告)
芋けんぴ(プロフ) - マチさん» ありがとうございます。嬉しい限りです。 (2020年7月21日 17時) (レス) id: 9d0d70bc15 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芋けんぴ | 作成日時:2020年7月14日 22時