人間洗浄機２

日常56　二回戦 ページ22

「選手入場です！」

二回戦が始まった。
少女は先ほどとは違い、一郎、二郎、三郎とともにイケブクロの控室から二回戦の様子を見ていた。

やはりラップとは面白い。

まず先に独歩が仕掛ける。
普段の彼の様子からでは想像もできないほど堂々としている。
日頃の鬱憤をぶつけるかのような荒々しいラップは世の中の社畜を味方につける事だろう。

それに対するのは帝統。
リズミカルにはきはきと言葉をつづる。内容はほとんどギャンブルだが…
真っすぐで純粋なラップはある意味独歩にはきつい面があるかもしれない。

次にマイクを起動させたのは例の金髪の男。
先ほど少女が見た時の姿とは一変、キラキラと女性を虜にしていく。
煌びやかで眩しいラップ。

対するは幻太郎。
流石小説家。言葉に風情が感じられるラップだ。
だが、そのきれいな言葉に確かにある棘は相手の急所を確かに狙っている。

そして各チームのリーダーは…

神宮寺寂雷のラップは
一つ一つの言葉に重みがありその言葉には相手を説き伏せる。
何故か聞いてるだけのこちらにも重圧がかかり、彼の言葉を黙って聞くので精一杯だ。

乱数のラップは
自分がどう見られているか計算されたラップを展開するが
その中で見え隠れする彼のダークな本性のギャップが素晴らしい。


やはり皆、個性のあるラップをする。
少女は見ていて純粋にすごいと思った。

「流石だな。」

「皆、やはり一筋縄ではいかないようですね。」

「ま、次勝つのは俺らだけどな。」

三兄弟も個々に感想を述べる。
いつ彼らと勝負をすることになるかわからない。
その分真剣に見ているのだろう。

しかし、少女と一郎は違和感を感じていた。

前半の乱数の調子が悪いように感じたのだ。
少女の場合、勘でしかないのだが、一郎には確信があった。

どうして様子がおかしいのだろうか。
少女は先ほど乱数の手が震えていたのを思い出した。


「麻天狼の勝利！！」

最後に立っていたのは神宮寺寂雷であった。

しかし、負けたはずの乱数の顔がすっきりしている。
後半になるにつれ本領を発揮し始めたかのように生き生きとした乱数。
良き仲間を見つけたのだろう。

明日の決勝戦は
ヨコハマ代表 MAD TRIGGER CREW
シンジュク代表 麻天狼
の戦いとなった。

少女はここでふとしたことに気が付く。

私が応援したチーム負ける説ない？

少女は頭を抱えるのだった。

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