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そうして、図書館で借りた本の返却期限が来た。
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翔「智くーん、もーアンネ読まないよねー？今日かえしに行くけどー」
歯磨き粉のミントの香りがする、清潔な朝。
洗面台のところから、顔を突き出してリビングを見たら、智くんがソファに座って靴下を履いているところだった。
なにが難しいのか、つん、と唇をとがらせて、つま先をどこかに引っ掛けてモタモタしている。
智「えー？」
こっちの声があまり届かないらしい。
それもそのはず。
俺は大量に歯磨き粉を出し過ぎたために、口の中が泡まみれになっているのである。
翔「ほーんー。返すけどー」
それでも辛うじて声を飛ばすと、リビングから、ううん、という唸り声が聞こえてきた。
翔「ううんって、なにー。いやなのー？」
智「やだー」
ん？
「やだ」？？
なんで？ もう読んでないじゃん。
翔「なんてー？」
智「いーやーだー」
え〜。
翔「え〜？もう読んでないでしょ〜？」
…応答なし。
また洗面所から顔を出すと、靴下を履き終わった智くんが、ノコノコとこっちへやって来た。
ゆったりしたサイズの長袖のTシャツを着ている。デカくないか？と思ったら俺のだった。返せよ、と思ったけど口の中に歯磨き粉が溢れていてうかつに喋れない。
智「うわ、妖怪・歯磨き粉出しまくりオジサンだ」
翔「おう、くるしゅうない」
智「つけ過ぎてさ、辛くないの？それスーパークールだよ？」
翔「ていうかさ、むふ、はんで…なん、なんで本返し、」
智「…先にうがいしたら？」
名案である。
先にうがいをする。
智くんはその間に、棚にあった俺のワックスの瓶のフタをあけ、レモンの香りを嗅ぐだけ嗅いだ。
翔「…アンネ返さないの？読むの？」
智「うん」
翔「えー。ほんとかよ」
智「読むよ」
決まり悪そうに俯いた智くんが持っている瓶に、指を突っ込んで、ワックスを少し取る。
髪に手をかける直前、鏡越しに目が合ったけど、なんというか、微妙な表情をしていた。
智「俺のもやって」
翔「自分でやりなさい」
智「えー…」
セットされていない柔らかな髪に、一度だけポンと手を乗せて洗面所から離れる。
智くんはめんどくさそうにまた香りだけ嗅いで、スタイリングせずにフタを閉めていた。
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〇月×日 晴れ
図書館に、本を返しに行かずに、電話して延長する。
でもアンネはどこまで読んだか忘れてしまった。「しおり」がほしい。
翔くんは歯磨き粉をつけすぎ。いつも泡。あわあわ。
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きんにく(プロフ) - 那智さん» 那智さん！わ〜〜、架空の映画です(笑)架空すぎて好き勝手に酷評しすぎました。えへへ。呑気な話ですが覗いてくれて嬉しかったです。ありがとうございます！♩ (6月10日 13時) (
レス) id: ed3941cf39 (このIDを非表示/違反報告)
那智(プロフ) - 『エリーとスミスが甘いので』を見たくなって検索してみた。そんなに酷い映画に何故泣ける？って思って。そんで、くだんねーって言いたかったなー。でも好き。 (6月10日 9時) (レス) @page41 id: f47ac2cfea (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - きよさん» きよさん！ありがとうございます。智くんが珍しく本を読んでるハナシを書きたいなぁと思ったらこんな大事になってしまいました😂ここのふたりは優しくて私も好きです。これからものんびり続けていくので飽きるまでどうか宜しくお願いします♩ (5月21日 14時) (レス) id: 7cf4abab0d (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - きんにくさん、お話しありがとうございます。感受性の豊かな智くんには辛い本ですよね。その本心をよみまちがえたと悔やむ翔くん。翔くんの機嫌を治そうと辛い本の話題をしようとする智くん。やっぱり素敵な二人だなと改めて思いました。これからも楽しみにしています。 (5月17日 18時) (レス) @page39 id: dcaa28dbe3 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - oneidnekdndojejさん» えー！わーおもしろかったですか！？ヤッターーありがとうございます！とても嬉しいです🤩拙いお話ですが楽しんでいただけて光栄です。いつもあたたかいお言葉に勇気づけられて書き続ける原動力になってます。こちらこそありがとうございます！ (5月14日 13時) (レス) id: 7cf4abab0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2021年12月31日 10時
