4月末日、鉛筆を削った ページ8
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ぜんぜん絵が描けなくなった。
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4月のはじめのころに、道で拾った桜の花を
押し花にしようと思って、翔くんの分厚い本の間に挟んでおいた。
翔「智くーん」
30分間の健康な昼寝を終えた翔くんに、ドア越しに名前を呼ばれたのは
押し花のことをすっかり忘れていた、4月のおわり。
春にほだされて なんにもやる気が出なくて、ただ4Bの鉛筆を研いでいた午後のことだった。
翔「なんか花が挟まってたんだけど」
気軽にドアノブが回されて、寝ぐせのついた翔くんが部屋に入ってきた。
窓から差し込む陽の光に目を細めて、日当たりがいいねと笑う。
翔「寝転んで研いでたの？危ないよ」
4枚目までくり出したカッターを取り上げられた。
十分すぎるくらい先を尖らせた鉛筆は、自分から手放したらコロコロとフローリングを転がっていった。
翔くんが、からっぽになった手のひらにヒラヒラと薄い花びらを落としてくれる。
翔「ほら。綺麗に押せてる」
そう言って微笑んだ翔くんの美しさを、どうにも意識しないわけにはいかなかったけど
いくらか水分の抜けた桜の花びらは、風が吹いていなくてもどこかへ飛んでいきそうで、慎重に持っていなければならなかったので助かった。
ごろんと寝返りを打って、床に仰向けになって 陽の光に透かしてみたら、それは生きていたときよりも均一に光を透過させた。
計算しつくされた薄い薄いステンドグラスみたいだった。
智「…ほんとだ」
翔「ね」
陽の差す窓で、カーテンが小さく揺れている。
外からは、鳥のさえずりとバイクのエンジン音がとぎれとぎれに聞こえてくるだけだった。
静かな昼下がり。
さっき、翔くんと一緒につつましい昼食を食べた。
それ以外には、今日は何もしてない。ちなみに昨日もおとといも、何もしてない。
ただ部屋で寝ころんでいただけだ。
毎日日記をつけてるんだけど、今日もとくに書くことがなさそうだ。なんて書こう。【鉛筆を削った】とか？
そんなことをぼんやり思っていたら、翔くんが「日記に貼れば？」と言った。
智「え」
翔「それ。花びら」
心を読まれたみたい。
翔くんて、ふだんはめちゃくちゃ的外れなくせに、たまに猛烈なエスパーを使う。どういう仕組みなんだか。
智「…あぁ、うん」
誤魔化すみたいな声が出た。
ぐんと伸びをすると、固まっていた関節が鳴った。ぽき、って。
智「そうする」
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きんにく(プロフ) - 山田さん» (続き)気を遣わせてゴメンナサイ。これからも楽しく読んで頂けたらと思います。いつも本当にありがとうございます。ピアニッシモにくださったコメントから、ずっと元気づけられてます。 (2021年10月5日 23時) (
レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 山田さん» (続き)書くこと自体は、私にとってとても楽しいことなのです。長く書き続けられたらいいなあとは、心の奥底で思っています(笑)それに、このような言葉を頂くと、なんにも気にせず長く書いていようかなあと思います。単純なのです。とにかくありがとうございますと、 (2021年10月5日 23時) (レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 山田さん» 山田さん、わざわざこちらにすみません！あっちのコメ欄が開いてなかったからでしょうか（汗）しかもネガティブなことを言って心配させたようで、重ね重ねすみません。それと、嬉しいお言葉ありがとうございます。しばらくは書き続けます！ (2021年10月5日 23時) (レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - きんにくさんの無理のないお気持ちで、きんにくさんの思う彼らをもし拝見することができたならとても嬉しいです。乱文申し訳ございません。ずっと大好きです。 (2021年10月4日 13時) (レス) id: 7341d1decc (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - きんにくさん コメントこちらにて失礼します。きんにくさんの書かれる作品が大好きで、休止した後も何度も寂しさを救ってもらいました。色々と環境が変わる中で簡単に続けてくださいなどと言える立場ではないですが、 (2021年10月4日 13時) (レス) id: 7341d1decc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2021年3月3日 23時
