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電話を切ったら、ソファの上から智くんがこっちを見ていた。
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俺はだいぶ、情けない表情をしていたんだと思う。
ちょいちょいと手招きをされたので、そのままソファの前にしゃがんだ。
智「…飼ってる猫が具合悪いんだって？」
さっきまでの執事ごっこで、すっかりしっかり者気取りだったのに、意気消沈してしまった俺を見て、智くんはケラケラと笑った。
智「にゃあ」
自分で言っておきながら、ぶふっ、と吹き出している。
体温が上がってきたからか、額に汗をかいているのをノロノロと手で払う仕草が、怠慢で、少し演技じみて美しかった。
高貴な猫に、見えなくもなかった。
翔「案外 嘘でもないね」
智「ひどい嘘だよ。すぐばれるよ」
くすりと、小さく笑い合ったら、どういうわけか堪らなくなって
このまま弱っている彼を抱きしめ潰してしまうか、それか、なにかめちゃくちゃな暴力をしてしまうか、そうでないと
そうでないと、自分を保っていられなくなりそうになった。
…とか、そんなことを言いながら
理性にがんじがらめになっているばかりの俺は、結局
火照った彼の細い首を
いつもと変わらない冷たい手の甲で、冷やすことしかできなかったけど。
智「ごめん翔くん」
首のあたりを、撫でられるのを
そうされることが当たり前みたいに、うすく微笑んで受け入れる。
そんな目を
今はしないで欲しかった。
智「寂しかっただけ」
でも、全部ぜんぶ分かるなんて、傲慢だ
それだって分かってる。
でも怖い。
そんなに急に、遠くを見ないで欲しい。
いつもこっちばかり、見てるじゃないか。
智「そんな顔しないで」
こっちのセリフだ。
そんな顔をしないで。
翔「……明日 は…」
言葉をずいぶん得意にしてきたのに、全然うまく話せなかった。
どうして急に、自分がこんなふうになってしまったのか、全然分からなかった。
智くんが、吸いづらそうに息を吸っている。
大事だと、思う。
かけがえのない、とか、代わりのない、とか
それが今、ここにある。
いつもある。
翔「ゆっくり…休もうね、俺……居るし…」
わけの分からないことを言った。
思考回路が、どこかで切れてしまっているのだ。
しばらく、呆けたような俺を、目をぱちぱちとして見ていた智くんは
ちょっと笑って
智「ずる休み」
と、嬉しそうに言った。
Fin.
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きんにく(プロフ) - 山田さん» (続き)気を遣わせてゴメンナサイ。これからも楽しく読んで頂けたらと思います。いつも本当にありがとうございます。ピアニッシモにくださったコメントから、ずっと元気づけられてます。 (2021年10月5日 23時) (
レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 山田さん» (続き)書くこと自体は、私にとってとても楽しいことなのです。長く書き続けられたらいいなあとは、心の奥底で思っています(笑)それに、このような言葉を頂くと、なんにも気にせず長く書いていようかなあと思います。単純なのです。とにかくありがとうございますと、 (2021年10月5日 23時) (レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 山田さん» 山田さん、わざわざこちらにすみません！あっちのコメ欄が開いてなかったからでしょうか（汗）しかもネガティブなことを言って心配させたようで、重ね重ねすみません。それと、嬉しいお言葉ありがとうございます。しばらくは書き続けます！ (2021年10月5日 23時) (レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - きんにくさんの無理のないお気持ちで、きんにくさんの思う彼らをもし拝見することができたならとても嬉しいです。乱文申し訳ございません。ずっと大好きです。 (2021年10月4日 13時) (レス) id: 7341d1decc (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - きんにくさん コメントこちらにて失礼します。きんにくさんの書かれる作品が大好きで、休止した後も何度も寂しさを救ってもらいました。色々と環境が変わる中で簡単に続けてくださいなどと言える立場ではないですが、 (2021年10月4日 13時) (レス) id: 7341d1decc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2021年3月3日 23時
