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智「ねえ、翔くんってさ」
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呼ばれて我に返ったら
智くんは閉じた日記帳の上に頬をぺたんとつけて、その姿勢のまま空中をぼんやり眺めていた。
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何かを考えているような表情だった。
智「翔くんて、なんで医者になりたかったの…？」
疑問符も上がりきらなくて、語尾がすこし、消えかけていた。
眠いのかもしれない。
乾きかけの髪に触れたくなったけど、しなかった。
翔「んー…、ブラックジャックに憧れて…って言ってたなあ、学生の頃は」
智「ウケたの？それ」
翔「言いたくないね」
智「ふふ…(笑)ふざけてたんだね」
翔「ふざけてたの。恥ずかしかったんだよね、本音を言うのが」
----『なんで仕事にしてまで絵を描きたかったの？』
喉の奥で詰まらせた、その答えを探すように
智くんは何度も、意味ありげなまばたきをした。
智「…誰にも言わないようにしてる？」
翔「ん？」
思ってもみなかったところを突かれて、少し戸惑う。
さっきまでぼんやりと宙を見ていた瞳が、不安そうに俺を捉えていた。
智くんに見つめられると、その目に映った自分が、いやにハッキリと見えて不思議だ。
智「本音は…誰にも言わないの……？」
ゼリーみたいな弾力のある潤いで、瞳がゆらりと揺れたら
その中に閉じ込められている俺の顔も、ぐらぐらと揺れて形を崩した。
本音は誰にも言わないの、か…
どうだろう
大人だから、ひとくちで言ってしまえない。
本音とタテマエの境目すら、時と場所と人が、否応なしに変えてくるのだ。
そういう事情を、智くんは分かるだろうか。
形式的には理解しているかもしれない。それでも好ましく思ってはいないと思う。
たとえ言葉を尽くして説明しても『ばかみたい』と眉を顰めるだろう。俺がいつも『大人なんだから』とか言うと、ものすごく嫌な顔をするから。
でも、まあ今は
そのような面倒で複雑でいやらしい話を
持ち込むべきでないことは確かだ。
今ここにあるもの。
長く続く日記と
忘れていた押し花、そして
一時的に描けなくなっている絵描きの
その瞳の不安げな潤い
なんだか
俺が触っちゃいけないものみたいだ。
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翔「そんなことないよ」
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きんにく(プロフ) - 山田さん» (続き)気を遣わせてゴメンナサイ。これからも楽しく読んで頂けたらと思います。いつも本当にありがとうございます。ピアニッシモにくださったコメントから、ずっと元気づけられてます。 (2021年10月5日 23時) (
レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 山田さん» (続き)書くこと自体は、私にとってとても楽しいことなのです。長く書き続けられたらいいなあとは、心の奥底で思っています(笑)それに、このような言葉を頂くと、なんにも気にせず長く書いていようかなあと思います。単純なのです。とにかくありがとうございますと、 (2021年10月5日 23時) (レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
きんにく(プロフ) - 山田さん» 山田さん、わざわざこちらにすみません！あっちのコメ欄が開いてなかったからでしょうか（汗）しかもネガティブなことを言って心配させたようで、重ね重ねすみません。それと、嬉しいお言葉ありがとうございます。しばらくは書き続けます！ (2021年10月5日 23時) (レス) id: 39aa1ff197 (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - きんにくさんの無理のないお気持ちで、きんにくさんの思う彼らをもし拝見することができたならとても嬉しいです。乱文申し訳ございません。ずっと大好きです。 (2021年10月4日 13時) (レス) id: 7341d1decc (このIDを非表示/違反報告)
山田(プロフ) - きんにくさん コメントこちらにて失礼します。きんにくさんの書かれる作品が大好きで、休止した後も何度も寂しさを救ってもらいました。色々と環境が変わる中で簡単に続けてくださいなどと言える立場ではないですが、 (2021年10月4日 13時) (レス) id: 7341d1decc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きんにく
| 作成日時：2021年3月3日 23時
