沈む気持ち ページ33
＊
「ほら、荷物貸して。」
私の持っていたキムチの入ったトートバッグをジョンデは当たり前のように持ってくれる。
「…ありがとう。」
お礼を言うと「どういたしまして。」と笑顔で返された。
彼のそういうさり気ない優しさやはじける笑顔が大好きだった。
それは私だけじゃなく、何人もの女の子がそう思っていたはず。
ジョンデは昔からとてもモテていたから…。
きっとさっきジョンデと一緒にいた子もそうなんじゃないかと思う。
彼女のジョンデを見つめる瞳が恋をしている瞳だったから…。
彼女は私が『スリズィエ』に行くとかなりの確率で見かける子だ。
ジョンデに会うために通っているんだろう。
はぁーっとため息をつく。
さっきまではジョンデとちゃんと向き合おうって思っていたのに、あの子と一緒のジョンデを見たらやっぱり私じゃない他の誰かとだったら、彼は幸せになれるんじゃないかという考えが浮かんできてしまう。
足元を見ながら歩いてそう思っていると、
「A んとこのおじさんとおばさんは元気だった？ずいぶん会ってないからさ。」
ジョンデが繋いだ手を自分のポケットに入れながら聞いてきた。
「あぁ、うちの両親は元気だよ。
それより……
今日ね、チャニョルに会ったの。オンニにも…。
元気そうだったよ。子供もとっても可愛いかったし…。
幸せ…そうだった…。」
足元を見ながらそう話す私をジョンデは繋いでいた手を引っ張って立ち止まらせる。
「A…。A はまだチャニョルのこと忘れられない？
まだ前には…進めない？」
不安げな表情で私に問いかける。
「そんな事はない……と思う。もう時間もずいぶん経ってるし。
ただ…。ただね、子はかすがいって本当だなって、そう思ったの。
だってオンニが妊娠していなかったら、たぶんチャニョルの隣にはまだ私がいたと思うのね。でもいろんな経緯があって別れたんだけど…。
今日会ったチャニョルはちゃんと父親になってたの。オンニと３人、ちゃんと家族になってた…。
それを見たら、なんか…。
やっぱり子供がいるって凄いことだなぁって…。
私が……できないことだなって。」
「A…。」
「だからね、ジョンデも私とじゃない他の誰かとの方が幸せになれると思う…。
だから……」
「A！」
大きな声で名前を呼ばれ話を途中で止められる。
少し怒ったような顔のジョンデはそれから無言で私の手を引き早足でアパートまでの道を歩いて行ったんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 362人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
のんなつ(プロフ) - ソナさん» ソナさん、はじめまして。コメントありがとうございます！思い入れのあるこの作品を感動したと言って頂いて嬉しくて泣きそうです。いえ、泣いております！ソナさんにまた読んで頂けるような作品をこれからも頑張って書いていきますね。本当にこまうぉ〜。 (2019年9月15日 19時) (
レス) id: f127892f84 (このIDを非表示/違反報告)
ソナ(プロフ) - はじめまして、ソナです。全て読みました。とても感動しました。とてもいい話だと思います(^∇^) (2019年9月14日 17時) (レス) id: b222874e5c (このIDを非表示/違反報告)
のんなつ(プロフ) - satoetu61さん» satoetu61さん、こんばんは。お久しぶりです。最後まで読んでくれたんですね。嬉しいです。長かったですがやっと終わることができましたよ。スピンオフも構想中ですのでまたお付き合いして頂けたらと思ってます。ホントこまうぉ〜。 (2018年1月17日 21時) (レス) id: af10dde10c (このIDを非表示/違反報告)
satoetu61(プロフ) - ずっと読んでいた者です。素敵な終わりかたで良かったです。何となく、赤ちゃんできたのかなって予想はしてました。また素敵な作品楽しみにしてますね♪ (2018年1月17日 8時) (レス) id: 8a70a7e8ec (このIDを非表示/違反報告)
のんなつ(プロフ) - ナツミさん» ナツミさん、初めまして。コメントありがとうございます。ドラマを見てるみたいなんて…。そんな素敵なこと言われるなんて私のほうが嬉しくて感動してしまいました。楽しんで頂けたのならよかったです。次のお話も読んでもらえると嬉しいな。ホントこまうぉ〜。 (2018年1月15日 22時) (レス) id: af10dde10c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のんなつ | 作成日時：2017年9月7日 20時
