大切なあなた (ページ9)

今日:12 hit、昨日:1 hit、合計:2,760 hit

ライブスタートページ9

やっぱり園子に捕まったかな・・。

なかなか現れない悠仁が心配でならない。

「誰か、待ってるのかい？」

マスターが見かねて声をかけてくれた。

「あ、えっと・・よく一緒にきてる・・

「北川くんだろう？
・・彼、待ってるんだね」

そう優しく微笑むとなにかを
演奏しようとしていた人たちに声をかけて
外へ出て行ってしまった。

マスター悠仁のこと知ってたんだ。
それにも少し驚きつつ、
携帯を握りしめていると

ドアがふわっと開いて

さっき遠くで見た彼がすぐそばに立っていた。

「あ・・っ」

私を探す彼に少し合図を送ると
にこっとして私に近づいてきた。

「おまたせ」

彼が座ったと同時に
演奏が始まった。

ジャズの音色が心地よく耳に流れてくる。

と、そこへマスターがドリンクメニューを持ってきた。

「お酒飲まない？今日限定でアルコールメニューあるらしいんだ。
あ、ほら、これ」

「あ・・ほんとだ。
じゃぁ一杯だけ・・どれにしよっかな・・」

私が選んでるすぐ横で
マスターと悠仁がなにやらこそこそ話している。

カシスオレンジにしよ・・。

「？」

「あ、ごめんごめん。
俺モスコミュールで。どれにするの？
あ、うん。じゃぁこれと」

マスターは私をちらっと見ると
微笑を浮かべながら中へ入って行ってしまった。

「キレイな曲・・」

「そうだね・・」

うっとりしてしまうような曲が
メドレーで演奏されている。

「ねぇ、なんか・・気づかない間にマスターと
仲良くなったんだね」

「あ、マスターとられて妬いてる？ｗｗ」

「そ、そんなことないってば！ｗ
あ・・マスター」

タイミング悪くマスターが飲み物を持ってきてくれた。

「・・ごゆっくりね」

「はい・・ありがとうございます」

悠仁はマスターににっこり微笑んでる。

「Aちゃんよりここ来てるよ、たぶん」

「え？そうなの？」

「うん。
ここ・・好きなんだよね」

そう言って店内を見渡している。

「うん・・落ち着くし、すき」

私がグラスを口に付けた瞬間

悠仁の視線が自分に注がれていることに気が付いた。

「・・なに？」

「や、なんか今日色っぽいなって思って」

「い、いつもと一緒だよ」

「・・そうかな」

そういって優しく笑うと演奏してるひとたちに目線を戻した。

・・口紅なんていつぶりにひいたんだろう。

少しの変化に気が付いてくれる
悠仁に少し嬉しくなってしまうのだった。