大切なあなた (ページ28)

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彼女とふたり　悠仁side ページ28

「こんにちはー！」
「あ！悠仁さんこんにちは！
今日はわざわざありがとうございます」

がちゃん

岩沢の家に彼女とふたりきり。

久しぶりに会えた彼女は一段と綺麗になってて髪があの頃よりだいぶ伸びている。

「だいぶお久しぶり、ですね。
お変わりありませんか？」

話し方が前に増して距離を感じるけど・・
「うん、元気だよ。Aちゃんは？
あの・・あれだね、引越しの日・・以来だよね」

毅然とした態度だった彼女の目が明らかに
ゆらゆらしてて、動揺してるのがわかった。

だってあの日・・・キスした仲だもんね。

「また会えて嬉しい。
呼んでくれてありがとね」

俺の言葉に目を伏せてスリッパを並べた。

「あ・・えっと今厚ちゃん外出してて」

「あ、うん。連絡したらそう言ってた。
入って待っててって」

「あ、そうなんだ、ね」

どこかほっとした顔をして彼女は
どうぞと扉を開いた。

「とりあえず帰ってくるまでお茶、いれるね」
「うん、ありがと」
岩沢の家には何度も来ていたが
あの頃よりいい香りがして
中に入るとふたりの写真があるのを見つけた。

海バックで彼女が岩沢にキス・・

まじかよ・・

「ここ、置いとく・・え？！
あ・・それは見ちゃ・・」
「ふふ・・いいね、らぶらぶなんだ」
「・・・」
「Aちゃんからキス・・された事ないよ？俺」

「・・あ、当たり前だよ。
付き合ってないんだから」

「そうだよね、付き合ってたら引越しの時した事以上のこと毎日できるもんね？」
顔を真っ赤にしている。
「ま、毎日なんかしてないから」
「へぇ〜でも毎日じゃなくても
してるんだよね？やらしぃ〜なぁ」

「・・・こ、うちゃんが帰って来るから
変なこと言わないでください」

「・・ふふふ。
今は満たされてる？？
岩沢でちゃんと・・」

「え・・」

「だって・・満たされてないって前まで言ってたから。もう大丈夫なのかなって」

「・・うん、大丈夫、だから」

「そっか。じゃぁもう俺は
必要ないのか、残念だな〜

あ、そうそう！じゃーん！

お誕生日おめでとう！」

「え？わぁーー！綺麗！この黄色いのは
ガーベラ？」

「うん、かわいいなって。
Aちゃんに似合うお花だなって。

あとは・・」

「かすみそう・・だね」

「うん」

「・・・ありがとう、悠仁さん」

「うん」

「・・・」

彼女はかすみそうを見ながら
目を少し潤ませた。

俺はその意味をどう理解したらいいんだろう。
そんな寂しそうな目しないでよ。