感謝とサヨナラ ページ12
わかってた。
そんなこと。
だって・・
「悠仁、ありがとぉ・・」
「・・・あ、うん。
俺の方こそ、聞いてくれて、
ありがとう」
照れた顔をしながら
お客さんに頭を下げると
私の手を握ってステージ裏に連れてこられた。
「あー、もぅ、緊張した。
Aちゃんまで上がってきちゃうから
びっくりしたよ」
そう言いながら 肩で息をしている。
「・・ふふ、ごめんなさい。
なんだか、
いろんな気持ちが溢れちゃって・・」
全て、わかってた。
あなたと、彼は違う人なんだから。
そんなこと。わかってる。
私は・・
「・・え、もしかして俺と・・」
「あ、あのごめんなさい。
私・・やっぱり彼のことが好きみたい」
「・・あ・・そっちか」
クスクス笑っている。
「悠仁・・私ね、
厚ちゃんの気持ちがわからないって
ずっと思ってた。
昨日だって・・楽しんでこいよ、なんて
言われて、イラついたりしたの。
でも・・行くなって言うよりも
もっと勇気のいること、だったんだよね。
私のこと信じてくれてるってことなんだよね」
私、ばかだ・・
彼から離れようとすると心が
わかるようになるなんて。
「それもね・・悠仁の優しい気持ちに触れて
気付けたの」
「・・・そっか。
うん、それならよかったよ」
私が不安に思ってるように
彼も不安に思ってる。
それこそ、
私が何度も悠仁に気持ちが揺れる度に
彼の心に傷を負わせていた。
そんなこと、
誰がどう見てもわかってたことなのに。
私だってわかってたはずなのに・・
私は・・・・
「帰ってあげなよ」
「・・悠仁・・」
「・・・？」
「今日は・・
一緒にいて？」
「え・・いいの？」
「・・・うん。
もう、きっと、私たち会わないから。
最後だからもう少し一緒にいたいの」
私の言葉に目を見開いたかと
思うと目を閉じこくっと頷いた。
「・・わかった。
じゃあ、飲むから付き合ってね」
その後彼はふらふらになるまで
飲んでいた。
「あぁーAちゃんにフラれた〜」
「飲み過ぎだよ〜」
私はどこか自分たちを客観的に見ていた。
これで、いい。
これで間違ってない。
気付けば夜中になっていて
私は悠仁をマスターにお願いして
タクシーに飛び乗り、帰ったのだった。
あぁ、何も、
最後に伝えられなかった。
それだけが
心残りだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miu | 作成日時：2019年11月4日 14時
