痛いのは最初だけ４【佐野玲於】 (ページ50)

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ゴジュウページ50

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玲於『そうだ。Aの母ちゃんにもお土産あんだけど。』

A『え！？私も！』

お父さん『そうか。、、、二人ともありがとうな。母さんとこに渡しておいで。』

私はお母さんが亡くなったことをずっとどこか受け入れてなかった。

毎日お仏壇の手入れにお供えとお線香、手を合わせることを絶対欠かさないお父さん。

返事が返ってくるはずもないのに、来る日も来る日もお母さんに色んなこと声に出して話しかけて。

私は声には出せない。

心の中で話しかけるのは、寂しいとか会いたいとかそんなことばかりだし。声に出したらきっと悲しみに涙が止まらなくなってしまうから。

ただただこんな小さなお仏壇にお母さんが入ってるのが辛かった。
お線香の匂いも、遺影のお母さんを見るのも苦しかった。

だからいつもはお父さんと少し時間をずらして手を合わせにくるの。

だって私がこんなこと思ってるってお父さんが知ったら心配するし悲しむでしょ？

けどきっとお父さんは私の気持ち知ってた。
時間をずらしても何も言ってきたことなかったから。

また寂しさと悲しみに捕らわれそうで少し躊躇したけど、、
玲於くんと一緒に入るこの部屋はとても温かさに包まれてた。

ピカピカに手入れされてるお仏壇にはお父さんの愛情が詰まってる。

ただいまってお線香をあげて、手を合わせて心からごめんなさいとありがとうを初めて口に出して伝えた。

A『お母さん、久しぶりになっちゃってごめんなさい。』

玲於『...いい顔だね、母ちゃん。』

遺影の中だってお母さんはいつも温かい笑顔で私達を見守ってくれてたんだよね。

それから玲於くんがお母さんにも私達のこと報告したりして、今まで話せなかった色んなこと沢山しゃべったの。

たまに玲於くんがからかってきたり、私がむくれたり、本当にお母さんが目の前に居て普通に三人で話してるみたいに。

私が買ったお土産はキレイなビーズとパンダが入ってる小瓶。

玲於くんのお土産は私にくれたのとお揃いのハシビロコウ。お母さんもきっとハシビロコウ？って戸惑ってると思う。

今ならお母さんの声が聞こえる気がする。

愛を周りにたくさん貰ってることに気づいたから、もう無くさないように見失わないように。

目に見えることだけじゃなくて見えない大切なもの、大切なこと、ちゃんと大事にするよ。

モノクロだった毎日も玲於くんと見る景色はこれからも色んな色に溢れてる。