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『なんてあるわけねーべや…』
私は夜空の浮かぶ星を数えるのを止め、ベンチの上に寝転がった。
そう、今のは全部妄想。
ただの願望である。
簡単に事が運んだら、そもそも家賃滞納でアパートなんて追い出されないっつーの。
やめだやめだ。ユンギさんに幻想を抱くの止めよう。
あの人は私のような人間を家に上げる野郎ではない。集団生活嫌いそうだもん。
それに、ユンギさんでヘビースモーカーだし同じ部屋にいたら副流煙が凄そう。
健康にも害があるに決まってる。
うぅ……。
そんな事言ったって…寂し怖い寒いお腹空いた…。
『誰でも良いので拾ってくださいって看板作っておこうかな…』
そうしたら優しいお姉さんとかが見つけて拾ってくれるかも！
私はヤケクソになってダンボールにそう書いて足元に立てかけた。
さて、ここに何人が通るだろうか。3人？5人？もしかして10人？
1時間経っても決して人が通ることは無く、もう涙も枯れてきた。
今日が最高のバッドデーだな。
って、あ！あああ！しょんぼり疼くまろうとしたその時、目の前に人影が。
「ﾎ、ホテル行く？」
『〜〜〜〜〜！！！！』
声にならない叫びが出た。
こ、怖すぎる…！
なんだこのおっさん。ちゃんとしたスーツ着てるのに、ほ、ホテルて言いよった！！！！！
『あ、あの…ちょっとそれは…』
「行く宛無いんじゃないの？」
暗くて顔が見えない。
怖い。
私がこんなこと言われる日が来るなんて、思ってもみなかった。
こういう人って、いるんだ…。
怖い。助けて。
荒い息が耳元に触れる。
「お兄さん、気持ちいいことしてあげる」
『ぬぅあっ！』
YG「おっさんキモいぞ」
ゆ、ユンギさん？
またこれ、これ、また、も、妄想？
YG「お兄さんって歳でも無いだろ」
ユンギさんだ、店長だ、ユンギさんだ！！！！！！！
ユンギさんがスマホを取り出すと、そそくさと退散するおじさん。
『ユンギさん、なんでここに！』
YG「散歩だよ散歩」
『散歩…』
嘘だ、あんなに石になりたい人が真夜中に散歩なんてするわけない。
『まさかユンギさん、私のこと好きなんですか？』
YG「妄想が飛躍しすぎだろ」
ユンギさんはスマホを少しいじると、私に背を向けて歩き始める。
着いていくべきか悩んでると、ふと振り返る背中。
その目は、早く来いって。そんな風に言っているように思えた。
＊＊＊
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作者名：ヨバラズ | 作成日時：2023年4月6日 11時
