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「彼のような才能にあふれる生徒が、言っちゃなんですが、こんな田舎で飼い殺されるのはもったいないですよ」
三者面談で、担任の教師は熱心に話し始めた。
「これほどまでに高度なハッキング能力を持つ生徒は、我が校で初めてです。主要なプログラミング言語を学生のうちに習得してしまうのは、本当に……天才としか」
「まあ、初めて知りました。ゲームが得意な程度だとばかり」
「とんでもない！ おそらく、彼なら簡単なゲームを作るくらいわけないですよ」
まぁ、と母親が再度驚いているが、わかっているんだかわかっていないんだか。
理系科目にも機械にも疎い母親だが、それでも、どこか自分に対する“無関心さ”が垣間見えた気がした。
まあ、もうそんなの慣れてしまったが。
「彼なら推薦先はよりどりみどりですよ。海外の有名大学だってきみを欲しがるだろう。きみのその能力は、DiVARの発展に必ず役立つ！」
先生が、自信と誇りに満ちた笑みを向けてくる。優秀な生徒を自慢に思っているような、お気楽な表情。
DiVARは、今や社会生活に欠かせない“善”のライフラインとなっていた。
五感に限らず、あらゆる不自由さを取り払った。音も、匂いも、感触も。拡張現実の枠を超えて、現実世界のすみずみにまで、違和感なく浸透していった。
人類の叡智の結晶であり、人類の発展と進歩の象徴であった。
そして、もはや、携帯や公共交通機関のような、なくてはならないツールのひとつとなっていた。
だから、そんなものを憎悪すらしている自分は。
世界から存在を許されていないような気がした。
……いつか、姉さんの中で、自分はアレよりも価値が低くなってしまうんだろうか。
なのに。
俺に、そんなもののために役に立てと？
今日の弟
「姉さんどこ行くん？ もう帰る時間やで。ほら、手」
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作者名：よぞら | 作成日時：2023年11月15日 22時
