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「ごめん待った？」
「ちょうどついたとこ」
夕陽の降り注ぐ廊下。いつもどおり変わらない表情で、ショッピが待っていた。
西日を受けた顔は、見慣れることなく、『芸術品だなぁ』なんて呟きが心の中でもれてしまうくらい端整で、ただ綺麗だ。すらっと伸びた手足は、もうすぐ私の身長を追い越してしまいそう。
見知った弟のはずなのに、知らない男のようにも思える。そんな不思議な感覚は、まだ慣れそうにない。
慣れているのは、この罪悪感だけ。
もう登下校も、私一人でできるのに。変わらず彼の時間を奪ってしまっている。
学校ではさすがに恥ずかしいので、階段でも手を握ってもらうことはない。かわりに、私が上り下りするのを、さりげなく注視してくれている。この“目”をとおして見るショッピの瞳は、私が今まで見た限り一番優しくて、大切なものを見守るそれだ。それはもう、こっちが恥ずかしくなるくらい。
軽口やツンツンした冗談を口では言いながらも、行動やその表情は私を最優先にしてくれる。
――それを、重荷に感じてしまうようになったのは、いつからだろう。
「それ、模試の申し込み？」
「うん！ なんか
「……別にそんなん受けんし」
「ダメだよ！ せっかく頭いいんだし受けてみたら？ 弟が全国１位とか自慢してみたいもん！」
「なんやそれ」
ショッピは眉をしかめ、小さく苦笑した。昨日の感情がわからないショッピではなく、“いつものショッピ”で安堵を覚える。
「ねぇ、ショッピ」
校門を出る。
夕方の温かくも寒くもない風が、私たちの間を通り抜ける。
「もう私のために生きなくてもいいんだよ」
今日の弟
「姉さんどこ行くん？ もう帰る時間やで。ほら、手」
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作者名：よぞら | 作成日時：2023年11月15日 22時
