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最近、弟のショッピに元気がない。
もともと元気いっぱいなテンションではないが、最近は様子が変だ。
この前、将来のことを話したときもそうだった。
「そんなもんない」
そう言い切った声の感情が、読み取れなかった。
五感のどれかが失われていると、それを補おうとして、他の感覚器が敏感になるという。
私の場合もそうだ。相手の声色や、空気感から相手の感情を察知する。私はそれが得意だった。
１０年以上一緒にいるショッピに対してもそうだ。
今きっと笑ってる。あ、今の発言はちょっと怒らせたかも。ちょっと悲しそう？ いや、疲れてるだけかな。
――そんなふうに、声から、空気感から、見えないなりに彼の感情を読み取っていた。
でも、視覚を手に入れた今。私の聴覚や触覚は、その機能を少し後退させてしまったらしい。
『そんなもんない。』
にべもなく言い切られ、私はどう返していいかわからなかった。
怒っている？ 悲しんでいる？ はたまた無関心？
「……そっか」
ショッピの心がわからなくて、そんな返事を返すことしかできなかったのが、今になっても悔しい。
無神経だったろうか。
今まで散々彼の自由を、時間を労力を奪っておいて。私に費やさせておいて。今さら「将来はどうするの？」なんて。
私がいなければ、ショッピにはもっとたくさんの選択肢があった。でも、私の登下校に付き添うため、必然的に私と同じ学校になったし、必然的に部活にも入れなかった。
私が、ショッピの選択肢を奪ってきたのだ。
優しい弟は、その事実を否定するだろうけど。
今日の弟
「姉さんどこ行くん？ もう帰る時間やで。ほら、手」
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作者名：よぞら | 作成日時：2023年11月15日 22時
