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淡白というか、淡白を越して、どこか非難するような響きすらあった。「あーやっと姉さんの世話から解放されるんか」とか、冗談めかして言ってくれると思ったのに。
思ってもないのリアクションに少し戸惑いながら、言葉を続ける。
「う、うん！ 段差の識別って視覚野のトレーニングになるんだって！」
「……」
「ほら、家なら人目を気にせずゆっくり下りられるし、トレーニングがてらね」
ショッピの反応が予想外で、ちょっと取り繕うようになってしまった。さんざん迷惑かけてきてなにを今さら、みたいなかんじなんだろうか。
固唾をのんで、ショッピの次の言葉を待っていると、
「……ま、転んで膝擦りむくのが関の山じゃないっすかね」
「そんなことないってば！ 見ててよ！」
いつもの軽口が返ってきて、ひどく安心した。
小さい頃、一度階段を踏み外し、大怪我をしたことがあった。それ以来、
「階段下りるときは、俺の手があるとき。約束やで？」
と、ずっとショッピの手を借りてきた。
そんな道程を、今日はショッピの手を借りず、ゆっくりと下りていく。
いつもはショッピに手を引かれてきた道。最近はショッピの手の大きさが私を越えてしまって、ショッピも男の子なんだな、とか、本当にどっちが上のきょうだいなんだかわからなくなるな、とか思う道。
「……どうだ！」
一番下まで下りきる。ドヤ顔で、ショッピの方を向く。
「……やるやん」
そう言ったショッピの微笑は、少し寂しそうに見えた。
今日の弟
「姉さんどこ行くん？ もう帰る時間やで。ほら、手」
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作者名：よぞら | 作成日時：2023年11月15日 22時
