【d!】世界を拒絶する前のいくつかの約束【syp】 (ページ12)

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「……平気なんや」

「え？」

「俺が海外に行ってもええんや」

　弟のかわりを、もう見つけたから。

「……ショッピ？」

　黙りこむ俺を、姉さんが訝しげに覗きこむ。

　心の奥に潜んでいたひっかかりが、ゆっくりと頭をもたげた。

　それはすぐに全身を露わにし、その大きな両手を広げる。胸の中を、それから全身を、どす黒くて、凍えきったナニカが隅々まで浸蝕していく。

　抗おうとは思わなかった。
　そのナニカは、別に、俺自身とそう変わらない存在だったから。

「姉さんは俺がそんな遠くに行ってもええんや」

「そ、そういうわけじゃないけど……」

「俺だったら嫌や」

「でも、それがショッピのやりたいことなら邪魔するべきじゃないと思って――」

*

「もうええ」

　ショッピはそう言って私を遮り、席を立った。

　決定的に、なにかを間違えてしまったのだと、本能的に気づいた。

　その夜を最後に、ショッピは私の前から姿を消した。