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「姉さん、起きて」
毎朝、私の世界はショッピの声ではじまる。
眠りから、夜の暗闇から、私を世界に呼び戻してくれる、少し舌足らずな声。１０年以上、私のそばにいてくれている、優しい優しい弟の声。
「おはよ」
「……まだ、ねむいぃ……」
「今日は定期検査やろ。ほら、繋ぐで」
「うー……」
ピピッ、という軽快な電子音。続いて現れる、「Now loading」という青白い文字。
真っ暗な空間に浮かぶそれに、最初はびっくりしたけれど。１週間も経つと、もう慣れてきた。しばらくするとロード画面が終わり、パッと視界が開ける。
世界が、私の目の前に現れた。
気だるげなアメジストの瞳に、フワフワした茶髪。まだ着替えていないのか、グレーのパジャマを着ている。別に寝起きとそう変わらないだろうに、我が弟ながらイケメンである。
人の容姿を"この目"で見始めてまだ２週間だが、ショッピの顔はものすごく整っていると思う。
今のところ、ナンバーワンだ……なんて、さすがにブラコンがすぎるだろうか？
「見えとる？」
「うん、問題ないみたい」
「なんかあったらすぐ言ってな」
「うん！ ありがとね。ショッピはほんとに優しい子だね」
「あ゛ー起こすのダルかったわぁ」
「ひっどーい！」
憎まれ口をたたきつつも、それが本心でないことはすぐにわかった。ショッピはそういう子なのだ。自然と口元に笑みが浮かぶ。
「ほら」とショッピが手を差し出してきた。階段を下りて、リビングのある１階へ行くためだ。今までは、ショッピの手を借りてきた。
今までは……"視力"を手に入れるまでの、私は。
今日の弟
「姉さんどこ行くん？ もう帰る時間やで。ほら、手」
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作者名：よぞら | 作成日時：2023年11月15日 22時
