【d!】元NPCはハッピーエンドを望まない

断章　視点：後輩　＋　黒猫 ページ49

誰が好きとか付き合ってるとかで盛り上がる女子も。誰がかわいいとか付き合いたいとかで盛り上がる男子も。どっちにも感情移入できなかった。
恋愛なんて面倒だし、興味ない。鬱先生の女遊びも、ちょっと違う世界の出来事のよう。俺はこうして猫をなでたり、寝たり、ゲームする方が楽しい。恋愛にかまけている連中は異星人かなにか。

――そう、思っていた。

だから、不思議な感覚だった。
この胸にわきあがる感情は、紛れもなく、そんな色恋沙汰のアレコレで。その中でもひときわ面倒な、嫉妬というやつで。

「どこで差がついた？ 早ない？」

自分を見つけたときよりも、副会長を見つけたときの方が、A先輩嬉しそうだった。なぜ？ 階段を転びそうなところを助けたし、俺の方がリードしているはずでは？

A先輩を抱きとめたときの柔らかさ、肌のなめらかさ。てのひらの温度と、少し汗ばんでいた感触。キスするくらい間近に迫った、深いブラウンの虹彩。ふわ、と香ってきた、シャンプーの匂い。
その全てが鮮烈に脳に刻みつけられて、気を抜くとぽけーっとしてしまう。たぶん、口元がだらしなくにやけているはず。我ながら、キモいと言わざるをえない。

……待てよ、逆か？ 触れられたくなかったのに、触れてしてまって嫌われた？？

「いや、先輩そんな人とちゃうはず……！」

と、言えるほど、彼女を知っているか？
こんなのただの願望だ。

「……う゛う゛ぅ〜〜〜〜……」

頭を抱える。おかしい。自分はこんなセンチメンタルで“面倒”な人間だったか？ 初めての感情が次から次へと押し寄せる。その感情には、必ずあの先輩との記憶がセットでついてくる。

「は〜競争率高いって」

A先輩が生徒会室で紹介されたときの、メンバーの反応を思い出す。みな一様に盛り上がっていた。誰が校舎案内するかで内ゲバが起きそうになるくらい、殺気だっていた。

まず、鬱先生。あの女遊び激しい先輩は、間違いなく手を出すだろう。
チーノも、前段階として“かわいい元気な後輩”ポジションにつこうとしていた。それはもう小賢しく。
顔がいいだけのクソ先輩(愛称)も非常な脅威である。
彼らだけではない。もし“三強”が参戦するなら、敵う気がしない。

「みゃあ」
「お前もA先輩に入部してほしい？」
「みゃおん」
「せやね……はぁ〜〜〜〜……」
「み゛ゃあ゛〜〜」

猫をギュウと抱きしめながら、深い深いため息がこぼれた。

...to be continued

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今日の部活

豚をなでていたら書記長が「なでてる姿を見てるだけで癒されるわぁ」とニコニコしています。

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