【d!】元NPCはハッピーエンドを望まない

８　∬　農業部 ページ42

校舎への道すがら、畑を見つける。

ジャージ姿の男子が一人、水やりをしていた。赤字のバッテンの入った白マスクという、ちょっと怖めなファッションセンスである。

農業部、だっけ。トントンさんからもらった部活動一覧には、畑で果実や野菜やらを作る部活動があったはず。

「農業部にご興味が？」

話しかけられてしまった！ じろじろ見すぎていたのかも。

「えっ！ あ、えと」
「みんなかわいいでしょ。見入るのもわかるわかる。もっとこっち来なよ」

おいでと呼ばれ、おずおずと畑に入っていく。雰囲気からして三年生だろうか。黒髪に、黒真珠のような瞳。黙って立っていると、鋭い切れ味を誇る日本刀のようだ。
今はニコニコと野菜たちに水やりをしているので、いくらかその雰囲気は和らいでいる。

「１か月でみんな成長したなあ」
「１か月？」
「そそ。この学校、生徒も兵隊として駆り出すでしょ？ １か月出張させられてたんだよ」
「そうなんですか、大変でしたね」
「他の部員がちゃんとめんどうみてくれたから、このとおり元気だけどさ。帰ったら帰ったで今度は試験やらなんやらいっぱいあるじゃん？」
「本当に多いみたいですもんね」
「やんなるよ〜早く夏休み来ないかなぁ」
「ふふ、まだ５月ですよ」
「だね。あーでも夏休みは夏休みで夏期講習とかあるか。のんびり暮らしたいなぁ」

やわらかい口調で、ぼやくように言う農業部男子に、自然と笑みが浮かぶ。
のんびり……そう、私が求めていたのはこれではないか？

「えっと、ありがとうございました」
「うん、またいつでも来てね」

快く見送ってくれる先輩(たぶん)を後に、校舎へ向かう。農業部、いいかも。

「……あ、名前聞けばよかった」





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「かわいい子だったな……」

恥ずかしそうに立ち去っていく姿を見送る。１か月ぶりに任務から戻ったが、思わぬ“収穫”があった。

「あれが噂の“転校生ちゃん”ね」

自然と口元に笑みが浮かぶ。

これから楽しくなりそうだ。

９　🎼　合唱部→←７　∬　「なんで？」

今日の部活

豚をなでていたら書記長が「なでてる姿を見てるだけで癒されるわぁ」とニコニコしています。

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