【d!】元NPCはハッピーエンドを望まない

４　∬　野球部　＞　？ ページ38

*




ボールを真剣に見つめるシャオロン。

シトリンのようなレモンイエローの瞳は、１ミリの動きも見過ごさないとばかりに、ボールに釘付けされている。

投手がゆっくりとフォームを描く。
投げられたボールは、キャッチャーのミットめがけ、まっすぐもの凄い速さで収まるかと思ったが、

カキーン！

なんの濁りもなく、気持ちの良いヒット音が響き渡る。
「走れー！」という掛け声、ザッザッと土を跳ね散らす音。

ルールはちっともわからないが、SEだけでわかるくらいに、野球部の試合が繰り広げられていた。

真剣そのもの、けれど全身で楽しんでいるシャオロンに自然と視線が吸い込まれ、目が離せなかった。



*



「ホンマに来てくれたん？ 嬉しいわ〜！」

少し休憩になったのか、シャオロンがやって来た。

「てか俺のことずっと見てたやん。見入っちゃった？」

いたずらっぽく笑いかけてくる。

確かに、シャオロンばかり目で追ってしまっていた。でもそれは、彼が“ゲーム”の中心にいたからというのもある。

「うん、すごい楽しそうにやるなって。ルール全然知らないのに、見てるだけでも楽しかったし」
「へへっ、じゃマネとかやろうや！ Aちゃんがマネとかめっちゃ頑張れるもん！」
「で、でも、野球のことなんも知らないし……」
「へーきへーき！ みんなはじめはそうやし！」

きゅっと距離を詰められ、両手を握られる。ものすごく自然な動きで、え、と思うヒマもなかった。ふにゃ、としているようで案外硬い手にドキっとする。野球部の練習のためだろうか。

「マネやるうちに覚えてくし、な？ はいろ？」

握られた手が、シャオロンの胸元へ持っていかれる。
「な？」と小首を傾げてお願いするシャオロンに、反射的に「はい」と返しそうになるのをぐっとこらえる。

どうにか正気を保とうとするが、手から伝わる温度が熱くなってきた。シャオロンが見つめてくる瞳は、うるうるしていて、小動物のようだ。ポメラニアン、とか誰かが言っていたっけ。こんなの、誰が断れるっていうのか。これはバフのせいバフのせい。しっかりしろ私。あ、でもヤバイ、このままでは――

「ちょっと待ったァー！」

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今日の部活

豚をなでていたら書記長が「なでてる姿を見てるだけで癒されるわぁ」とニコニコしています。

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