邂逅 ページ14
「一番恐れるものを表してみた。気に入った?」
くるりとひと回りして、うやうやしく一礼する“私”。頭のてっぺんからつま先まで“私”だ。
満面の、悪魔じみた笑顔以外は。
「え、は……?」
「うーむ、微妙か? ならば――」
パチン、と指が鳴らされる。
次の瞬間、目の前の“私”は、金髪と、血のように赤い目をした男に変わった。男はいかにも偉い人が着るような、仕立てのいい軍服に身を包んで、邪悪な笑みに唇の端を吊り上げている。
一目見てわかる。
こいつは、ヤバい――
「我が愛しの“バグ”よ! よくぞその手を伸ばした! 俺の見込みどおりだ!」
「え、え……」
全く状況がわからなかった。言葉を失う私そっちのけで、男は愉しそうに尋ねる。
「その目覚めた自我で、お前は何を望む?」
男は期待を込めた瞳で見つめてきた。愉しげではあるが、悪ふざけの“わ”の字もない、真剣そのものの表情だ。それに気圧され、さらに言葉がでなくなる。
何を望むか、だって?
自分が望むものなんて、そもそも“自分”すらわかっていないのに。そんなものわかるはずがない。
けれど、
「……――私は、私であることの確信が欲しい」
私の口は、私の意思とは無関係に、無意識に言葉をつむいでいた。
男の表情が変わる。おもしろくなさそうな顔で、片方の眉を小さく上げた。
どうやらお気に召さなかったらしい。
「陳腐だな」
「私は……私は、自分がどうやって、どこから来たのか知りたい」
「俺がお前にそれを説明したとして、お前はそれを
「……そういう、わけじゃ……」
「人の在り様はうまれでは決まらない。人の在り様を決めるのは、いかなる思想を持ち、いかなる行動を選択するかだ」
男は、底から響くようなバリトンボイスで言い切った。
聞くものの注意を否が応も引きつけて、釘づけにするなにか――カリスマ性とでも呼ぶべきそれをまとった声に「そのとおりだ」とひどく頷く自分がいた。
でも、果たしてそうか?
どこから来たのかを知ることは、そんなにも無為なことか?
“それ”に寄りかかりたいがために、私は知ろうとしているのか?
――ちがう。
今日の部活
豚をなでていたら書記長が「なでてる姿を見てるだけで癒されるわぁ」とニコニコしています。
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よぞら(プロフ) - まも。さん» コメントありがとうございます!文才だなんて恐縮です…(照)ですがそのようにお褒めいただけて嬉しいです!天使モードのtn氏のやわらか〜いほわ〜っとした感じを出したかったので嬉しいです…!引き続きお楽しみいただければ幸いです! (3月11日 13時) (レス) id: 5ed934123e (このIDを非表示/違反報告)
まも。 - 最初の「ふわ、と」で文才が開花しすぎて発狂しそうです。好きです。文才でバカボコ殴りつけられた気分です。好きです。陰ながら応援させてもらいます。 (3月10日 17時) (レス) @page1 id: b9c9a804fc (このIDを非表示/違反報告)
よぞら(プロフ) - なべるさん» コメントありがとうございます!万人受けはしないかも…と思っていたので、神だなんて言っていただき飛び上がるほど嬉しいです!!おそれ多いですが、引き続き更新がんばります! (12月9日 16時) (レス) id: 5ed934123e (このIDを非表示/違反報告)
なべる(プロフ) - 設定や文の書き方とか凄い好みでめっちゃ面白いです! 本当に神作品…もっと伸びてくれ… 更新頑張ってくださいね… (12月8日 20時) (レス) @page24 id: 41846b4a21 (このIDを非表示/違反報告)
yoakemae(プロフ) - 爛々炯々さん» コメントありがとうございます!なんと、初日からとは……!そのように言っていただきとても嬉しいです!!引き続き更新頑張ってまいります!! (10月27日 22時) (レス) id: 281ccc1f99 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よぞら | 作成日時:2023年10月9日 21時