第二百二十四話【失ってから気づくこと】 ページ37
────「つまり週に一回、異能特務課にて検査を受ければ父と会っても良いと?」
電話の相手は異能特務課、坂口 安吾だった。安吾は私の言葉に口を開く。
「はい。今回の事件を受け、我々は人工的に作られた異能力者である貴方を知る義務が異能特務課にある。もし協力していただけるのであれば、貴方のご要望には応えましょう」
私はその言葉に少し考えた後、口を開いた。
「わかりました。取り敢えず検査には協力します。ですが、あまり危険な検査はしないでくださいよ。私自身もそれは嫌ですし、そんなことしてるってうっかり探偵社員の皆さんに口を滑らしたら皆さん何をするのかわかりませんから......」
そんな人体実験みたいなことはしないと思うが、いざ探偵社員達がそんなことをしていると知るとほぼ百%の確率で異能特務課に乗り込んでくると思う。
恐らく太宰辺りが何をしでかすかわからない。彼のマフィア時代、部下に対して"五回殴って二発打つ"のような冷徹さ、それ以上のことをすると思うと安吾は無意識に身震いした。
「......肝に銘じておきます」
安吾は少し黙った後、短く答えた。
「あぁ、でもごめんなさい。これだけは言っておかないと......」
私は安吾に異能力が使えなくなってしまったことを説明した。
────「なるほど。例の事件で異能力を失ったと......ではこちらもそのことも視野に検査していきましょう。それで、もし検査結果で貴方に異能力が戻る方法があるとしたらどうします?また、その力を手に入れますか?」
「私は......」
その言葉に言い淀む。そして少し考えた後、口を開いた。
「少し前の自分だったら、異能力なんて要らないって思ってましたけど、いざその力が無くなってしまうと今は少し寂しいです。でも例えもう彼らという存在が消えてしまっても、私はこれから一人で生きていかなきゃいけないんです。まだ一人でメソメソしてたら皆んなに心配されちゃいますし......」
大切なものは失ってから気づく。本当にそう気づくことが遅すぎた。
「だから、もし異能力が私の元に戻らないことになっても、私はその運命を受け入れます。彼らが此処まで繋げてくれたこの生を今度は私自身が続けていけるように」
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トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» コメントありがとうございます!無事に完結することができました。そう思っていただけたのなら私も嬉しいです。私も知っている作品がありましたらぜひ読ませていただきますね(^^) こちらこそ応援してくださりありがとうございました! (2023年1月31日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 完結おめでとうございます!!トキハルさんの書く文章を読んで私、漸く作者側に戻ってみようと思うことが出来ました。今度は私の作品を読んでいただけたらとても光栄です^^本当にお疲れ様でした!! (2023年1月31日 10時) (レス) @page40 id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» たくさんお待たせしてしまってすみません(┯_┯)ずっと待っていてくださりありがとうございました! 後編もまた来週くらいには上げられるように仕上げていきますので、今もう少しお待ちしていただけるとお願いしますm(_ _)m (2023年1月28日 10時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 続編おめでとうございます!!そしておかえりなさいです!ずっとずっと待ってました^^戻ってきて下さっただけで嬉しいです!!更新応援してます!! (2023年1月28日 7時) (レス) id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2023年1月26日 23時