第二百七話【知らざる心】 ページ20
「その科学者は......どうなった?」
管理人の話を聞いていた太宰は訊いた。
「今は崩壊した研究施設の下敷きになってるよ。もう二十年以上も前に」
管理人は何も嘆くことなくただ端的答えた。
「なら、何でお前はこの話を知っている......誰も知らない筈だろ......?」
証拠も何もない真実さえ疑わしい話。だが、兎に角今は情報を得るしかないと国木田は訊きだした。
「私も昔、その研究施設で働いていたのさ。だから、秋田Aのことはその研究者の次に知っている」
「何で研究所は崩壊したんだ」
「何処で情報が漏れたのか......被験体B12の暗殺・破壊計画が出てね。その依頼を受けたのが秋田 Aの育ての親。色々と施設も機能不全にしてくれてね。でも、私にだって彼女には愛着はあった。だから、賭けに出たんだよ。殺 しに来た秋田に彼女を託そうと」
自分諸共破壊しに来た敵に、この世で他にはない研究対象を預けた彼の心理は分からない。だが、そんな彼の交渉を受け入れ、研究対象を守ることを約束した暗殺者の心理も今となっては分からない。
「彼奴の嫌そうな顔は今でも覚えている。だが、私の予想は正しかった。彼は最期の時まで、裏切ってさえ良い約束を守り通した。これには脱帽するよ」
管理人はまるで昔のことを思い出すかのように笑った。
「さぁ、この話を聞いて君も何か言いたいんじゃないかい?」
管理人は一人呟いた。まるでそこにいる誰かに呼びかけるかのように。
"私はもう二度と会いたくなかったのだけれど......"
少女のような声がこの場に響く。そして、白い小さな光と共にその姿を現した。
「君は......!」
敦は驚きの声を上げてその者の姿を見た。
その者は正に秋田 Aと瓜二つだった。一瞬、秋田 Aと見間違える程に。
「彼女は『骸骨の舞跳』だよ。彼女が此処にいるということは秋田 Aも死んでいないという証明になるかな?秋田 Aのことを良く知る人物は彼女の他にはいないよ」
"フンッ......どの口が言っているのかしら。確かに私はあの子のことなら何でも知っている。だって、あの子が産まれた時から私はずっと隣にいたのだから......それに貴方のこともね"
『骸骨の舞跳』はキッと管理人を睨んだ。
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トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» コメントありがとうございます!無事に完結することができました。そう思っていただけたのなら私も嬉しいです。私も知っている作品がありましたらぜひ読ませていただきますね(^^) こちらこそ応援してくださりありがとうございました! (2023年1月31日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 完結おめでとうございます!!トキハルさんの書く文章を読んで私、漸く作者側に戻ってみようと思うことが出来ました。今度は私の作品を読んでいただけたらとても光栄です^^本当にお疲れ様でした!! (2023年1月31日 10時) (レス) @page40 id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
トキハル(プロフ) - 藍染紅琳さん» たくさんお待たせしてしまってすみません(┯_┯)ずっと待っていてくださりありがとうございました! 後編もまた来週くらいには上げられるように仕上げていきますので、今もう少しお待ちしていただけるとお願いしますm(_ _)m (2023年1月28日 10時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)
藍染紅琳(プロフ) - 続編おめでとうございます!!そしておかえりなさいです!ずっとずっと待ってました^^戻ってきて下さっただけで嬉しいです!!更新応援してます!! (2023年1月28日 7時) (レス) id: 94358f61cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:トキハル | 作成日時:2023年1月26日 23時