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第百三話【逆境を逆手に】 ページ7

私は僅かに動かせる手で鉄線銃のボタンを押した。すると、公園の柱に突き刺さっていた鉄線銃の刃が私の元に戻って来た。ワイヤーの先端には返しの刃物がついている。うまく手元に戻れば蔓を切ることができる。


ザシュッ......!


刃物が蔓を切った。手が自由になったことで腰にある小刀を手に装備した。そして足の蔓を刀で切り、組合から距離を取った。


「すごいね。僕の蔓を切る方法があるなんて、でも状況は変わらないよ」


スタインベックが落ち着いたまま自身の抱いた感想を述べる。


確かに一人だけで六人の異能者を相手する事なんて、一生のうちにあるかないかといってもいい出来事だ。頭では相手の能力も素性も分からないまま、戦闘に持ち込むのは危険だと分かっている。しかし、もう逃げられない。向こうも私を見逃すとは思えない。


そんな状況下で作戦があるとすれば、もうこれには......勝つ方法はない。いや......勝たなくていい。生き残る方法を考えるだけだ。


今は鏡花がどれだけ逃げる距離を稼げるか、そしてこの状況でどれだけ相手の異能力の情報を引き出させ、探偵社に情報を伝えるか。身を呈して、この逆境を逆手に取れば、探偵社に恩恵をもたらせる。私のやるべき事はそれだけ。


私は静かに小刀を構えた。


「僕達と戦うつもりかい?なら、その気持ちに応えてあげよう」


スタインベックの言葉の後、葡萄の蔓が私に向かって伸ばされた。スタインベックの首からは葡萄の蔓が伸びていた。 彼は植物の蔓を操る能力者なのであろう。


私は刀で蔓を切り裂きながら走った。そして、 スタインベックの間合いまで来ると、彼の体に向かって蹴りを入れた。


しかし、私の攻撃は蔓によって拒まれた。スタインベックは防御を計った後、もう一度私に向かって蔓を伸ばした。私はそれを見て、蔓を切り裂きながら後ろに下がった。


「ふー、危ないお嬢さんだ」


スタインベックは云った。


一人でも戦闘不能にしておきかったがそうはいってくれない。流石は組合の実力者だ。スタインベックが再び攻撃を仕掛けようとすると、牧師の男がスタインベックの肩に手を置いた。


「では、今度は私達が相手をいたしましょう。スタインベックは下がっていなさい。行きますよ。マーガレット」


「貴方に指図されなくてもわかっていますわ」


牧師の男と日傘を差した女性が私の前に出た。

第百四話【紅血と風化】→←第百ニ話【一欠片の賭け】



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トキハル(プロフ) - 長らくお待たせしましたm(_ _)m 更新始めていきます。 (2020年3月4日 15時) (レス) id: a4508594ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:トキハル | 作成日時:2020年3月4日 14時

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