幸せにしたいから【第五人格】

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ナワーブと、部屋の前ですれ違った？
まさか、部屋の前にいたなんてことはないよね……



『ナワーブ、怪我は大丈夫そうだった？』


泣いていたの、聞かれてなければいいけど……

若干の焦燥感に苛まれながらも、彼の身を按じる。


ダウン状態を取られていたから、彼だって無傷ではないはず。


「あぁ、所々に包帯は巻いてあったが君よりはマシだったよ」

『そうなんだ、よかった……あっ』


そこまで悪くない報告を聞き、安心したと同時にお腹が鳴る。

恥ずかしさに思わず目を逸らすが、イライの視線を感じる。


「はは、ずっと寝ていたからね。お腹が空くのも仕方ないよ。さ、早く食べて」

『う……ごめんね、ありがとう』


相変わらずイライは優しいな……


言われた通り、そそくさと手に取ったスプーンでスープをすくう。
温かいスープが、じんわりと喉に染み渡った。






・
医療室を後にすると、俺は自室に戻って今日のゲーム日記を書いていた。


サラサラとペンを動かしながら、記憶を蘇らせる。


"ナワーブ、手……"


チェアから俺を呼ぶAの声、表情、目の色。
彼女の手を握った時の感触。




「……くそっ、あちぃ」


もはや過去の出来事なのに、今更事の一部始終を思い返して顔がのぼせたように熱くなる。


あんな色気も可愛げもねえ女に、何で俺が心を乱されなくちゃならねえんだ。
それこそナイエルさんやマルガレータさんの方が女性らしさはあるというのに。


……医療室から聞こえたすすり声は、Aのものだよな。


今頃は、あいつのところにはクラークのやつが一緒にいるのか。
まあ、あいつらは人格の相性もあってかよく一緒にいるし、互いのことも分かっているんだろう。



今まではどうともなかったような嫉妬心が、初めて心の奥でうずめいていた。




あいつを、俺が、元気づけてやりたかった。



・

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