幸せにしたいから【第五人格】

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しばらくして、ドアの向こうからポソリと声が聞こえた。


籠っていてよくは聞こえないが、片方がイライの声だとはわかった。


すぐさまティッシュを二枚ほど取り、涙を悟られないよう目を擦る。

いや、イライには絶対ばれるだろうけどね？もう一人の誰かにはばれたくなかった。誰だかは知らないけれど。



トントンと静かな部屋にノックが響く。

くしゃくしゃのティッシュをゴミ箱に投げ捨て、スッと息を吸い込む。


『っど、どうぞ！』


明るい声、明るい声。


カチャリと音を立てて開いたドアの向こうには、案の定イライが立っていた。

彼は私と目が合うと(といってもこちらからは見えないけど)、にこりと人当たりの良さそうな笑みを浮かべた。


「失礼するね、ちょっとした食事を貰ってきたよ。調子は？」


彼はパンとスープの乗ったトレイを手に持っている。おぉ、美味しそう。


『わざわざありがとう！全然平気、これくらい大したことないから』


喉から出た声は、自分でも平気だと思うほど大丈夫そうに聞こえた。


ありがとうともう一度お礼を言いながら、彼の持つトレイに手を伸ばす。


というか、あれ、一人かな？


『イライ、一人で来たの？』


私の勘違いじゃなかったら、多分誰か他にもいたような気がしたんだけど。


内心そんなことを思いながら返事を待つ。



「あぁ、いや……そこでサベダーとすれ違ったよ」






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