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入り口付近の席でぼんやりと外を眺めていると、ふと前の椅子の引かれる音がした。


「随分と元気がないわね、ほんとにナワーブ?」


「マーサ」


少し茶化して言う彼女の手には、デザートの皿が三つ。

こいつ、めちゃめちゃ食うじゃねえか。
まあ、Aが五皿食ってるのを俺は見たことあるけどな。いやあ、あれは笑ったな。


こんな時でも、思い出すのはあいつのことばかり。いよいよ病的だな。


「何だか元気がないわね」


コトリと俺の前に、カットフルーツの乗った皿が一枚置かれる。
ああ、一つは俺のだったのか。


「……わりぃな」


一つ礼を言うと、「いいえ」と返事をしてから、彼女は続けざまに口を開いた。


「何か悩みごとかしら」


「悩みというか……よくわかんねえ」


歯切れの悪い返事に、マーサが訝しげな表情で俺を見る。

そして間もなく彼女から出た言葉に、ビクリと肩が揺れた。


「間違えてたら悪いけど、もしかしてAのことだったりする?」


「はっ?なんでだよ……」


「図星ね」


わかりやすいだのとクスクス笑うので、少し恥ずかしくなって目を逸らす。

逸らした先には、恐らくAのおかわりを運んでいるであろうクラークが目に映った。


「あいつらのこと、応援してやりてえ……けど」


「……けど?」


「顔見ると、どうしても気持ちが矛盾するんだよ」


今だって、元気のねえAにフルーツを持っていくクラークが羨ましくて仕方がない。

本当は、俺が励ましてやりたい。


「別に無理に抑え込まなくたって、貴方は自分の気持ちに素直でいればいいじゃない」


「あいつらの妨げになるようなことはしたくねえんだよ」



「妨げね……」


ぱくりと苺を口に入れたマーサは、何か考えているような顔をしながら、
Aの方をちらりと目で盗んだ。


「ところでナワーブは、彼女がイライさんを好きって直接聞いたのかしら」


「いや……聞いてはいねえけど、見てたらわかるだろ」


そう言った途端、彼女がピッとフォークで俺を指す。


「その決めつけはよくないわね。他の女性に相談していたら、今頃ため息をつかれているわ」


「は……?あ、おい!」


空になった皿を手に、ガタリと席を立つマーサ。
待て待て、まだ話が掴めてねえよ。


「じゃ、頑張ってね」


それだけ言い残してひらりと手を振った彼女。

疑問の残った頭を抱えて、皿に乗ったフルーツ達に視線を落とした。



「……どういうことだ?」



あの言い方だとまるで

Aの想う相手が、クラークではないような……



「だとしたら、誰なんだよ……?」






イライ・クラークの戯言→←24



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ノア - いい話でした!!!でも完結しないで欲しかった!!!なんか寂しい!!! (2021年9月16日 18時) (レス) id: d3532bbf31 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダー - 完結おめでとう!!ナワーブかっこよかったなーこれからも頑張れ (2020年1月23日 18時) (レス) id: 54c7bc329a (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 完結おめでとうございます!ナワーブくんと夢主ちゃんの葛藤……二人とも幸せになって良かったです!イライくんは…ちょっと悲しいけど…とても素敵なお話でした! (2019年8月14日 8時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
setuna7014(プロフ) - 完結おめでとうございます、とても素敵な作品でした。次のお話も期待しております (2019年8月14日 3時) (レス) id: 9c6758aed7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - setuna7014さん» 率直なコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます!更新頑張ります…! (2019年8月3日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽぴら | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年7月18日 0時

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