22 ページ23
そろそろ夕食の時間帯だ。
いつもなら飛びつくように食堂へと向かうが、今の俺にはそんな気力はなかった。
そういや今日のメニューは、ミートローフだっけな。
今頃A、よだれでも垂らしながら食堂に向かってんのかな。
あいつ、怪我もあって最近は軽食ばっかだったからな
久々にガッツリ食えるって喜んでたり……
ベッドに仰向けになりながら、ぼんやりと思い出すのはAのことばかり。
「っ……」
彼女とクラークを応援しようと考えた。
彼女を幸せにできるのは、きっと俺じゃない。
そんなことばかりが頭をよぎっては、ずきりと胸が痛む。
占い師の隣で、幸せそうに笑う彼女を困らせたくない。
だから、意味のないこの感情は隠しておくべきだ。
ごろりと寝返りをうった刹那、
扉から控えめなノック音が鳴った。
そしてすぐ後に聞こえた声に、バッと上半身を起こした。
『ナワーブ、いる？』
「……A？」
Aの声だ。
わざわざ俺を呼びに来たのか？
ここから食堂までは少し距離があるのに？
もう感じたくない期待の心が湧いてきて、眉間に力が入る。
『もう皆夕食取り始めてるけど……もしかして疲れて寝てた？』
扉越しに聞こえるAの声に、嫌でも鼓動が速くなるのがわかった。
これ以上、こんな気持ちにはなりたくねえのに。
上着を羽織って扉を開くと、少し目線の低い彼女と目が合った。
と、唐突に彼女が吹き出す。
『ふっ、寝癖ついてますけど』
「うるせえな……つうか、わざわざ迎えにきたのか？」
ちらりと彼女を見ると、そうだと頷く。
『久々すぎて食べらんないミートローフ、ナワーブの口に突っ込んでやろうかなって』
そう言って楽しそうにはにかんだ彼女に、思わず釣られて頬が緩む。
コイツのこういうところが好きだな、なんて。
そして同時にありもしない、つまらない期待が頭を悩ませる。
Aの想う相手が、俺だったらいいのに。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 295人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノア - いい話でした!!!でも完結しないで欲しかった!!!なんか寂しい!!! (2021年9月16日 18時) (
レス) id: d3532bbf31 (このIDを非表示/違反報告)
ソーダー - 完結おめでとう！！ナワーブかっこよかったなーこれからも頑張れ (2020年1月23日 18時) (レス) id: 54c7bc329a (このIDを非表示/違反報告)
主人公(プロフ) - 完結おめでとうございます！ナワーブくんと夢主ちゃんの葛藤……二人とも幸せになって良かったです！イライくんは…ちょっと悲しいけど…とても素敵なお話でした！ (2019年8月14日 8時) (レス) id: b1a69e75f8 (このIDを非表示/違反報告)
setuna7014(プロフ) - 完結おめでとうございます、とても素敵な作品でした。次のお話も期待しております (2019年8月14日 3時) (レス) id: 9c6758aed7 (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - setuna7014さん» 率直なコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます！更新頑張ります…！ (2019年8月3日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
