. ページ5
俺らが手を振ると手を振り返しやって来たなりくん。
左手には1枚の紙が。
「2人とも見て! 今日はね、ヒーローを書いたんだ!」
そう言ってなりくんが見せてきてくれたのはなるほど確かにマントとヒーロースーツを着たヒーローが見事に描かれている。
毎度ながら、なりくんの絵は上手い。俺よりも上手いんじゃないかと感心する。
「スゴいねぇ、上手く描けてる!」
「僕より上手いよ、なりくんはホントに凄いや」
知念さんもそう思ってたみたいで俺と似たようなコトを口にしてたから笑ってしまった。
「ねぇねぇ、2人にはヒーローっている?」
なんて考えてると、なりくんはそんな質問を俺らに問うてきた。
それにしてもかなり難しいが、俺にはある人が思い浮かんだ。
「俺は……小さい頃迷子になって泣いてた時にたこ焼きを差し出して慰めてくれたたこ焼き屋のおじさんかなぁ」
だって、彼こそが今の俺がいる理由なのだから。
美味しいたこ焼きを差し出してくれて、俺を両親の元まで連れていってくれたおじさんは俺にとって「ヒーロー」そのものだ。
……そんな話を目をキラキラさせながら聞く2人には思わず笑ってしまったが。
「うーん、僕は……いないかなぁ〜。中島さんみたいにヒーローって思える人は」
「そっかぁ〜」
なんて会話してるうちに、なりくんは店長さんに呼ばれて去っていった。
それを見た知念さんもそろそろ戻らなきゃ、と店へと戻って行ってしまった。
「……ヒーローって思える人はいない、か。」
思わず、そんな言葉と共にため息が出てしまった。
俺は、知念さんにとってヒーローに今はなれてなくてもいつかはなれるだろうか。
……お気づきかもしれないが、俺は知念さんのコトが好きだ。
いつからか、は分からないが最低限2年くらいは片想いを続けている。
このマカロンたこ焼きで小説を書かせてくれ! と頼んできた男性(伊野尾先生)と知念さんが何やら仲良さげなのを見て、それで漸く俺は知念さんが好きだと気づいたのだ。
……嫉妬で恋心に気付くなんて少しみっともないが、気付かなかったよりマシだと思うことにした。
それにしても。俺は知念さんのコトを好きだが知念さんは俺のコトを全くそういう風に意識していないからどうしようもない。
けど、それでいい。
男同士なんだから、それ以上なんて望んでいないのだから__。
80人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:日波 輪廻 | 作成日時:2022年12月14日 22時