帰り道 ページ30
何とか屋敷から脱出すると、入出さんたちは既に見えなくなっていた。
……まぁ、無事に帰り着けているだろうし大丈夫だろう。ゆっくり戻ろう。
軋む身体を叱咤して、ふらふらと烽火に向かって下山していたら忍霧さんに出くわした。
「………あれ、忍霧さん？戻られた筈では……？」
「見てきて良いと言われてな。鬼ヶ崎の所へ戻るんだ。……って、九瓏、ひどい怪我だぞ……！早く戻って路々森に診て貰え。合流地点はもうすぐそこだ。」
………あっさり怪我がばれてしまった。袖で隠すべきかな。
「そうしますね。お気遣いありがとうございます。」
「……さっきは取り乱して悪かった。お前もそんな状態だったというのに、心労をかけたな。」
「気にしないで下さい。私にも双子の兄が居るので、気持ちはわかるつもりです。」
言ってしまって気が付く。
………あ、やってしまった。これ話すつもりじゃ無かったのにな。生きて帰って来れたから気が緩んでいるのかもしれない。
「……！そうだったのか。」
「はい。………じゃあ、また後で。」
「ああ。」
取り敢えず私の兄も失踪していることは伏せておいた。そこまで教える必要はないだろう。
忍霧さんと別れて歩くこと10数分……くらいだと思う。体感ではそれくらいだ。いよいよ身体が限界を迎えつつあるのか、足元が覚束なくなってきた。帰り着けるのかなこれ。
「あっ、Aさんです！Aさん！！」
「……伊奈葉さん！皆さんも……！」
ようやく、皆の声が聞こえ始める。
………良かった。ちゃんと帰りつけた。無事とは言い難いけど、生きているから御の字だ。
「……ただいま、戻りました。」
皆入出さんの処置をしている。彼の腕もそこまで深刻な容態ではないらしい事にほっとした。
………それよりもう疲労感と痛みが半端じゃない。流石にここまで無茶するのは久しぶりだ。
「……Aちゃん。」
「はい？」
入出さんが元気そうな事を1人で喜んでいたら、声をかけられる。声のした方を向くと、逢河さんが立っていた。
………なんか、焦ってる？
無表情だけど、雰囲気と言うか。なんとなく彼が焦っているように見える。
「………左肩。」
「あぁ、これですか。えっと、キハチさんに吹き飛ばされて……こう、壁に叩き付けられちゃいまして……。大丈夫ですよ。見た目より軽いので。」
「………手当て。」
「えっ。」
返事をするより先に、まだ比較的軽傷だった右手をそっと掴まれ連行された。
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ユキヨル(プロフ) - 厘さん» ありがとうございます(*´-`)免疫かき集めて更新していきます！ (2019年8月30日 20時) (
レス) id: b49c625d58 (このIDを非表示/違反報告)
厘 - お身体に気を付けて、更新頑張ってくださいね！ (2019年8月30日 14時) (レス) id: 4d8a897ec9 (このIDを非表示/違反報告)
厘 - 続編おめでとうございます〜！逢河くんの小説少ないので本当に嬉しいです！チートや鈍感過ぎるとかそういう夢主じゃないのが特にいいですし、ちゃんと考えて書かれているなとよく思います！時々逢河くんが怒ったりしてるのもすごく良くて… (2019年8月30日 14時) (レス) id: 4d8a897ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ユキヨル | 作成日時：2019年8月29日 21時
